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闘莉王「俺が何とかするよ」
奇跡の逆転残留へ、男は微笑んだ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/02 17:00
田中マルクス闘莉王が復帰して、名古屋のサッカーには一本芯が通った。この男が再び奇跡を起こすのだろうか。
「俺が何とかするよ。覚悟はもっている」
闘莉王が名古屋に戻ってきたときに勝ち点で並んでいた湘南は、既に来季のJ2降格が決まった。しかし、名古屋は最後に望みをつないでいる。
「そう考えるとポジティブなことだし、みんなをそこに向かわせることも俺の仕事。だから、みんなには今のこの状況を楽しむくらいの気持ちになってほしいと思っている」
千葉県の渋谷幕張高校を卒業した'01年、広島でプロになり、水戸、浦和、名古屋でプレーし、今年は16年目だ。浦和で'06年リーグ初優勝と'07年アジア制覇を果たし、名古屋では移籍1年目の'10年にリーグタイトルを獲得した。'06年はリーグMVP。そして、'10年も優勝請負人と言って良いほどの大活躍だった。けれども、今課せられている役割に華々しさはない。茨の道でしかない。しかし、闘莉王は言う。
「プロ16年目でこんなに緊張して眠れないのは初めてだけど、もう、(試合2日前の)火曜日から寝れなくてもいい。こんなオッサンになってこんな苦労しなくてもいいと思うけど、俺が何とかするよ。その覚悟を、俺はもっている」
力強い口調で締めくくり、グラウンドを後にしようとした闘莉王が、ふと言った。
「子どもが笑っている写真が送られてきてね。昨日初めて笑ったらしい」
9月14日に生まれた長女と愛妻の顔を思い浮かべ、3日の最終節に奇跡を起こそうという熱血漢は、しばし微笑んだ。