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闘莉王「俺が何とかするよ」
奇跡の逆転残留へ、男は微笑んだ。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2016/11/02 17:00

闘莉王「俺が何とかするよ」奇跡の逆転残留へ、男は微笑んだ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

田中マルクス闘莉王が復帰して、名古屋のサッカーには一本芯が通った。この男が再び奇跡を起こすのだろうか。

臨月の妻に怒られながらも、復帰を決意。

 6年間在籍した名古屋との契約延長がまとまらず、ブラジルに帰国していた闘莉王の電話が鳴ったのは、8月21日だった。名古屋は5月4日の横浜F・マリノス戦を最後に3カ月以上も白星から遠ざかっており、降格圏にどっぷり浸かっていた。

 その時点での年間順位は現在と同じ16位だったが、17位の湘南ベルマーレと勝ち点で並び、15位のヴァンフォーレ甲府との勝ち点差は7もあった。クラブは、8月20日の柏戦に1-3で完敗したタイミングでとうとう小倉隆史前監督を更迭したものの、遅きに失した感は否めなかった。

 しかも、ボスコ・ジュロヴスキー監督から復帰の要請を受けた闘莉王には、臨月の妻がいた。当然、悩んだ。そして当然、妻には怒られた。

 だが復帰を決意した。脳裏に浮かんだのは、名古屋のサポーターの姿だった。何もせずして、彼ら彼女らを悲しませるわけにはいかないと思った。

闘莉王の復帰から、4試合で3勝という復活。

 9月。闘莉王の復帰と同時に、名古屋は息を吹き返した。9カ月もの公式戦ブランクをものともせず、9月10日の新潟戦でいきなりセンターバックとして先発すると、仲間を鼓舞しながらチームを19試合ぶりの勝利に導いた。

「いつでもJリーグに復帰できるように、ブラジルで頑張って自主練する」

 今年2月、日本を去って母国に戻る際の言葉が偽りではなかったことを証明してみせた。

 続く第12節ガンバ大阪戦は力負けしたが、第13節仙台戦、第14節福岡戦に連勝すると、この時点で甲府を抜いて15位に浮上。第15節磐田戦に引き分けて再び降格圏に戻ってしまい、第16節は神戸に敗れたが、一時は大方の目が「名古屋降格」と読んでいたことを思えば、最終節に残留争いをしていること自体が奇跡的と言える。

「ボスコ監督も言っていたけど、最後の最後に決着をつけられる状況に持ってこられたのは、よくやってきたという証拠でもある。あれだけ勝ち点差が開いていたのを、勝負できるところまで持ってこられたのだから」

【次ページ】 「俺が何とかするよ。覚悟はもっている」

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