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「もう、やる気自体がない」の衝撃。
興梠慎三は、何に苦しんでいたか。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/09/21 11:00
浦和のエースは、興梠慎三である。2ndステージ、そしてCSを優勝するためには、チームの先頭にこの男がいる必要がある。
久々に興梠が発したポジティブなコメント。
切れてしまった気持ちをつなぎ直すには、時間が必要だった。幸か不幸か、浦和のFW陣はタレント揃いだ。興梠が絶不調に陥っている間に、ズラタンや高木俊幸が調子を上げてレギュラーの座を奪い、チームは勝ち点を積み重ねた。途中出場という立場の中で、「トレーニングでも普段は動かないようなところで動いてみたり」と、何とかしようともがいた。
そして、監督がメディアの前で厳しいコメントを発してから1週間、「今週すごく良いトレーニングができた」と手応えを得て臨んだのが、今回のFC東京戦だった。
「自分のコンディションが上がらない中で、この1点は簡単なゴールだったけど、すごく重みのあるゴールだった」
そして「僕は絶好調になると思いますよ」。
気持ちと体がバラバラになっていた時期を耐え、ようやく自分でも復調を感じていたタイミングで結果を残したことが嬉しかったし、ホッとしたのだろう。どこかネガティブなものが多かった彼の言葉も、前を向き始めた。
「スッキリしたというか、それがFWだから。点を取らないと勢いがつかないからね。こうやって結果を残した今は、スタメンを貪欲に狙っていきたい。100ゴールまであと4点で、今日決めてあと3点になった。自分の目標はそこだから、スタメンで出ればあと3点は取れると思うので頑張っていきたい」
このゴールで、J1通算ゴール数が97に伸びた。リーグの残りは5試合だ。鹿島アントラーズで数々のタイトルを獲得した男は、常に「最後の5試合が勝負だから」と言い続けてきた。その戦いが始まろうとしている。
そして最後に「僕は絶好調になると思いますよ」と言い残してスタジアムを後にしていった。サッカー人生を懸けた大舞台を終えて一度は燃え尽きた浦和のエースが、完全復活を遂げようとしている。