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「もう、やる気自体がない」の衝撃。
興梠慎三は、何に苦しんでいたか。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/09/21 11:00
浦和のエースは、興梠慎三である。2ndステージ、そしてCSを優勝するためには、チームの先頭にこの男がいる必要がある。
「これが燃え尽き症候群なのかなと」
「サッカー人生で一番出し切った感じがありますね。燃え尽き症候群ってどんなのかなって思っていたけど、これがそうなのかなというくらい。何もモチベーションも上がらないし、筋肉も言うことを聞いてくれない。もう、やる気自体がないから」
逡巡した思いを振り切るように、そして体の中から絞りつくすように気持ちを高めた大会が終わり、喪失感もあったのだろう。いつの間にか、自分の中身が空っぽになってしまった。
2013年に浦和に加入してからずっとこだわり続けてきたタイトルも「年間順位とか、そういうことも考えられないくらい自分で精いっぱいだった」のだと話した。
監督から“ほぼ名指し”で告げられた苦言。
帰国してからの興梠のプレーは、明らかに精彩を欠いていた。フル出場は一度もなく、ゴールも生まれない。トレーニングでも、どこか存在感が希薄だった。9月10日の鳥栖戦後の記者会見では、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督から、明らかに興梠のことだと分かる言葉を投げかけられていた。
「名前は言わないですけど、交代で入った選手のプレーに関して、私は非常に不満を持っています。そのことは私だけでなく、選手自身も自分で感じ取れたことだと思います。今がよくなければ、日々のトレーニングを大事にして、しっかりトレーニングするという原点に立ち返ってやってほしい」
手厳しいコメントを残した監督だが、実際にはトレーニングの後に何度も興梠と個人的に話をしている。練習場の大原サッカー場でペトロヴィッチ監督の“指定席”である、室内練習場の入り口にあるテーブルで、2人は会話を重ねた。その中で、興梠自身も監督に正直な自分の状況を伝えていたのだという。
「監督と毎回しゃべって、正直にモチベーションが上がらないと伝えていた。それで出てチームに迷惑をかけるのもダメだと思いますので、そうやって自分のコンディションを伝えることがチームのために良いことだと思って」