野球のぼせもんBACK NUMBER
上野由岐子「周りに流されちゃダメ」。
SB千賀滉大の胸に“エースの金言”。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/09/15 07:00
投球回を超える奪三振数は剛腕の証。千賀はシーズン通じて先発の座を守りきろうとしている。
「足の裏に“目”がついているような感覚で」
鴻江トレーナーはフォームチェックにも定評があり、千賀の弱点もすぐに見つけた。「せっかくの速いボールも、低めにいくと垂れてしまっていた」。そこで、上げた左足を地面に持っていく際に「足の裏に“目”がついているような感覚で」と言葉を送った。そのポイントを修正しただけで、壁が出来て、下半身の体重移動も前よりスムーズになった。
低めのストレートが、ぐんと伸びた。
吉見とはキャッチボールをしただけで、一流のすごさを思い知らされた。
「ボクが自分の右半身に構えたら、そこしかボールが来ないんです。いわゆる対角線になる右打者のアウトコースばかり。ミスしたとしても、中には入ってこないんです。『抜けるならボールになるように。外れると思ったら、思いっきり外せ。甘くなっちゃいけない』と。キャッチボールからそのような意識で取り組む大切さなどを学ばせてもらいました」
中日・吉見、そして上野とも何でも言い合える仲に。
尊敬する先輩相手に、千賀は臆することなく豪速球を投げ込んだ。吉見が思わず左手を振る。「アイツ、いい根性してますよ」と苦笑いしていた。ただ、そのキャッチボールのように遠慮なく懐に飛び込んできてどんな小さなことでも吸収しようとする姿勢は、吉見を喜ばせた。ひと足早く名古屋に自主トレ先から離れた吉見は、千賀に愛用のスパイクをプレゼントした。現在そのスパイクは千賀の実家に大切に置いてある。
上野からは金言をもらった。
「言葉の一つ一つがすごいなという印象ですが、特に覚えているのは『周りに流されちゃダメ。三流の選手は三流のことしかしない。一流の選手は三流のことはやらない』という言葉ですね」
今年1月も千賀、吉見、上野はともにトレーニングをした。今ではもう何でも言い合える仲だ。