Number ExBACK NUMBER
世代交代を約束した“誓いのパス回し”。
ロンドン五輪世代のブラジルW杯秘話。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKoki Nagahama/JMPA
posted2016/09/09 14:00
2014年、ブラジルW杯での日本代表の合宿地イトゥの練習場での齋藤、山口、酒井(宏)。彼らが行動で示した「誓い」が初めて明かされる。
「今の環境に僕らがあるのも上の世代のおかげだけど」
――どんな悔しさでしたか?
「ケガから復帰した(内田)篤人くんの(足の)状態もあるなかで、僕がオプションになれなかった悔しさ。(当時の)ザッケローニ監督が悩むまでのオプションになれなかったということなので」
――パス回しがとにかく激しかった、と。
「ほかのメンバーが見ていたわけじゃない。でもリラックスしてやっていたら、3試合ピッチで戦ってきたメンバーに対して失礼だし、あのメンバーたちと僕も一緒に戦ってきたんだという気持ちが欲しかった。そういうのが僕のなかにありました」
――自分たちの世代が今後引っ張っていくという思いもあったのでしょうか?
「(上の世代が)海外とかW杯とかやっぱりあの世代が切り拓いてくれて、僕らがたどっているところもあると思う。言わば先駆者だし、今の環境に僕らがあるのも上の世代がかかわってくれているからだと思います。でも日本が強くなるためには下からの突き上げが必要だってことは、僕らみんなが思っている。そうすればもっといい競争が生まれてくると思うので」
「良い意味でも悪い意味でも個性が無いように見える」
――同世代のなかでそういう話になったことはあるんですか?
「いや、各々思うだけで、ブラジルでもそういうことを話すってことはなかったですね。心に留めておくものかなと僕は思うし。僕らは良い意味でも悪い意味でも(ほかの世代と比べると)個性がないように見えるかもしれないけど、もちろん気持ちがないわけじゃないですから。昨シーズン、ハノーファーでは(清武、山口と)同世代の3人でプレーできたのは良かったし、別の道に進んで結果を出していくことが代表のレベルアップにもつながるとそれぞれ思っているはず」
――あのパス回しの意味というものを、今振り返ってみると?
「僕個人としては単純にうれしかった。みんなやっぱり悔しいんだなって。誰もそんなことは言ってないけど、思っているから集まった。日本代表が負けるって、それは凄く悔しいこと。みんなそういう思いが強かったんだな、と再確認できたのはうれしかったです」
そしてもう1人、齋藤はハリルジャパン復帰を目指して横浜F・マリノスで猛アピールを続けている。