マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
秋にのんびりしてる選手は“消す”。
ドラフト目前、今見たい選手たち。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/09/06 11:00
京都翔英の石原は、高校通算42本塁打。身長は169cmだが、体重は90kgに迫る。その長打力は本物だ。
京都翔英・石原彪の覚悟は本物か。
さあ、明日はどこへ行こう。
もし私がスカウトなら、新幹線で西へ向かい京都翔英高のグラウンドへ行ってみよう。この夏の甲子園で見せた圧倒的な鉄砲肩とスイングスピード。捕手・石原彪(いしはらつよし・3年・169cm87kg・右投右打)の“その後”が気になってしょうがない。
「女手ひとつで育ててくれたお母さんへの恩返しにプロへ行きたい。そのための準備をこれからしないと」
負けた試合の囲み取材で、そう言って泣いていたという。それが心から発した言葉なら、今ごろは懸命に準備を始めているはずだ。
では、プロ入りのための準備とは何か?
練習を続けること?
冗談じゃない。
1年生、2年生の新チームの練習にぶらっとやって来て、手伝いみたいな“からだ慣らし”なんかしているようだったら、残念だけど、あれは口だけだったと解釈しよう。
高校野球からのプロ入りはある意味“暴挙”である。
プロ入りの準備とは、夏より能力を上げるために秋を過ごすことだ。
高校野球からプロ野球へ。
当たり前のように毎年多くの選手たちが進んでいくが、よく考えてみるとこれは、大学、社会人の2階級を飛び越えて、そのまた上のレベルに飛び込もうというある意味“暴挙”なのだ。
そのために、この秋はどうあるべきか。
練習についていけるだけの体力を作って……。冗談じゃない。
自分の体力と技術をプロのレベルに近づけるための練習に、どれだけ1人で励めるのか。その覚悟がどこまであるのか。
それを確かめに、もし私がスカウトなら、明日は石原彪の今を見に行こう。そして、グラウンドの外野のフェンスあたりから、気がつかれないようにそっと眺めて彼の覚悟を感じてこよう。