ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「内山高志なき夜」W世界戦の主役。
“つよかわいい”田口良一に貫録が。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2016/09/01 17:00
“つよかわいい”と称される田口(右)だが、宮崎との戦いでは闘争本能をむき出しにする場面も。
難敵・宮崎をリーチとフットワークで圧倒。
余談であるが、人気バンド「SEKAI NO OWARI」のSaoriが中学時代の同級生だという。田口は世界タイトルを獲得した際、同級生に開いてもらった祝勝会のときの様子を「ボクの祝勝会なのに、みんなSaoriのサインをもらっていた」と苦笑いしながら話すのを聞いたことがある。どこかとぼけたキャラクターもこの王者の魅力だ。
試合は難敵と思われた宮崎を、田口が突き放していく展開となった。身長で11.3センチ、リーチで13.5センチ上回る王者は、このアドバンテージを十分に生かした。フットワークも駆使して宮崎のアタックをことごとく封じ、ジャブと右ストレート、ボディ攻撃でポイントを着実にピックアップした。
後半、何度か打撃戦に突入しそうになり、そのたびに田口はググッとエンジンをふかしたのだが、宮崎は乗って来ず、そのまま試合は終了。最終スコアは116-112、117-111、119-109。大勝と表現して差し支えない勝利に、田口は「スピードでも上回っていたと思う」と胸を張った。
スパーリング相手の八重樫も舌を巻く好内容。
デビュー当時から田口とタッグを組む石原雄太トレーナーは、試合後の控え室で汗をぬぐいながら納得の表情を浮かべた。
「宮崎選手が田口のジャブに右を合わせてくるのが怖かったんですけど、常にフェイントをかけてジャブを打ち、2回からは完全にペースをつかむことができました。宮崎選手はもっと出てくるかと予想していたけど、思ったよりディフェンシブでしたね。田口は以前に比べて距離を支配できる時間が長くなりました。昔は相手に合わせてしまうところがあったけど、そこが成長だと思います」
同じクラスでIBFのベルトを持つ八重樫は「もう少し拮抗した試合になると思っていたんですけど。ああいう前に出る展開になると田口くんは強い。宮崎選手は下がる展開になってしまったのが苦しくなった要因だったと思いました」と感想を述べた。何度もスパーリングをしている八重樫の予想をも上回る、田口の出来だったというわけだ。