「彼が何人かということを忘れて応援したくなる」

「ジャパンの枠とはあんまり関係なく、米ツアーで戦う1人の有能な若い選手として見ている。ジャパンの枠から出ることがない選手なら、たぶんアメリカでは支持されないし、人気も出ない。マツヤマは体格も大きいし、飛距離も出るし、眺めていると彼がどこの何人かということを忘れて応援したくなる」

　そう、忘れてしまうほどだから「ベスト・ジャパニーズは？」と問われても「マツヤマ」と即答することにはならないという、なんともユニークな自説。

　なるほど。米国人とのディベートは、これだから面白い。

その時代において、どれだけのことを成し得たか。

「それじゃあ、ソノコは誰がベスト・ジャパニーズだと思うのかい？」

　当然ながら、その記者から問い返され、こんなふうに答えた。

「アメリカの土の上に立ってベスト・ジャパニーズを論じるのなら、私はやっぱり米ツアーや世界の舞台の上で、どれだけいいパフォーマンスをしたかが、ベストを決める基準だと思う」

　しかし、時代が違い、選手層の厚さや密度がまるで異なる中で米ツアーに参戦した過去の日本人選手たちを横に並べて比較するのはナンセンス。相対評価ではなく、その選手がその時代において、どれだけのことを成し得たかという絶対評価こそが大事だと私は思う。

　選手たちの技術レベルは年々高くなる一方だ。そのコンペティティブな世界の中、まだ24歳、米ツアーフル参戦3年のうちにすでに2勝を挙げた松山のスキルが十分に高いことは論ずるまでもない。

　今年の6月からは成績が振るわず、予選落ちが続いたが、松山はショットもパットも本来の調子を取り戻せない中、それでも全米プロ4位、ウインダム選手権3位。調子が万全ではなくても、スコアリングの上手さと忍耐力でどうにか結果を出すことは、プロアスリートとしてのミニマムの務めだ。

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