リオ五輪PRESSBACK NUMBER
金藤理絵、金メダル直前にあった危機。
コーチが出した定石破りの指示とは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2016/08/12 15:30
世界ランキング1位の実力を最後に発揮した金藤。五輪の一発勝負ならではの怖さを味わいながらも勝者となった。
「このままだったら、理絵が負けてしまう」の一心。
「これで間に合った。そう思いました」
その瞬間を、加藤はこう振り返った。アップの泳ぐ距離を変えたのも、最後の最後に2本増やしたのも、大きな賭けだった。通常ならあくまで調整ということで、レース本番に疲労を残さないように考慮してアップは行なわれる。しかし2人は、セオリーを無視したのだ。
この蛮勇とも思えるウォーミングアップは長年、選手を見てきたコーチならではの蓄積もあってこそだろう。何よりも、こんな思いが必死の行動につながっていた。
「このままだったら、理絵が負けてしまう。その思いだけでした」
迎えた決勝での金藤の堂々とした泳ぎが、ギャンブルの成功を雄弁に物語っていた。
勝負の行方を大きく左右した、加藤コーチの決断だった。