リオ五輪PRESSBACK NUMBER
20歳、142cmの女子体操の主将。
寺本明日香、個人8位入賞の意義。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2016/08/12 12:30
体操界では時に「17歳限界説」がささやかれることもあるが、寺本明日香は軽々とその壁を乗り越えて見せた。
ロンドンでは最年少、リオでは最年長。
チーム最年少の16歳でロンドン五輪に出場してから4年。20歳でチーム最年長となったリオ五輪ではキャプテンを任された。
リオに向かう前の国内合宿。激励に訪れた池田敬子さんに「キャプテンはノーアップでいくくらい、堂々とした気持ちでいきなさい」と心得を授けられた。
初めてキャプテンを務めた昨年の世界選手権では周囲への気遣いで消耗してしまい、自分のことがおろそかになってしまったが、今回は「池田先生に言われて、堂々としていこうと思った」と言い、その心意気が功を奏した。
団体ではメダルまであと一歩の4位入賞。そして、個人総合では52年ぶり8位入賞。ノーミスの演技で好成績を収め、「去年までは失敗があって順位が下がっていたが、今回はしっかり自分の演技をすることができての結果。わたしは満足です。やりきれたということが満足です」と胸を張った。
'11年東京世界選手権で世界デビューを果たし、ロンドン五輪の団体出場権獲得に大きく貢献した。試合直前の選手交代にも動じることなく跳馬の演技を成功させた逸話は語り草だ。
'12年ロンドン五輪では、団体8位入賞に貢献したのみならず、個人総合で日本チーム最高の11位と大健闘。続く世界選手権では'13年個人総合9位、'14年種目別平均台4位、昨年も個人総合9位と安定感抜群だった。
「世界戦を6年間やってきて、毎年パンパンだった」
寺本のリオ五輪はこれで終わった。15歳から20歳の6年間、つねに全力疾走を続けてきた今、考えているのは帰国後3カ月ほど休みを取ってリフレッシュしたいということだ。
「けっこうパンパンなんです。世界戦を6年間やってきて、毎年パンパンだったので、ちょっと一回息抜きをしたいという気持ちもある。東京五輪や世界はあまり考えていません。来年は大学4年生なので、インカレをやりたいという気持ちもある」
坂本コーチも「かなり練習をやりこんできたので、心も体も休ませたほうがいいと思う」と同調する。
取材エリアを立ち去る最後、「ロンドンとはまた違う楽しさだった。感動できた五輪だった」とすがすがしい笑顔を浮かべた寺本。142cmの小さな身体で2020東京五輪のメダルにつながる土台を作り上げたエースは、微笑みとともに世界舞台からいったん退く。