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甲子園で増え始めた「継投派」監督。
150球超えの“美談”はもういらない。

posted2016/08/11 07:00

 
甲子園で増え始めた「継投派」監督。150球超えの“美談”はもういらない。<Number Web> photograph by Kyodo News

盛岡大付が初戦の先発に選んだ坪田は、県大会のエースではなかった。チーム作りの段階から、複数の投手を育ててきた成果だろう。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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 また米メディアから"Crazy"と報じられそうだ。

 開幕日の第3試合、盛岡大付vs.九州国際大付の試合で、九州国際大付の右腕・藤本海斗が8回3分の2を投げて7失点。最後は盛岡大付の2番・菅原優輝にホームランを浴び、無念の9回途中降板となった。藤本がマウンドを降りた時の投球数は150球を優に超え、164球に達していた。

「最後は限界を超えてマウンドに立っていられるかどうか、精神的な問題でした。エースナンバーを背負っているからには、命がけでマウンドに立ってみんなを助けたい気持ちだった」

 藤本は涙をぬぐって壇上で言葉を振り絞ったが、日本一を決める最高峰の舞台の在り方として、果たして、これは正しいのだろうか。この原稿を書き終えた大会第3日の第1試合でも、市立尼崎のエース・平林弘人が延長10回を183球完投ということも起きた。昨今の米メディアの反応が過剰気味であることを差し引いても、“Crazy”と報じられても反論できそうにない出来事であった。

 実際、藤本は限界に来ていた。何より本人が「8、9回からは握力がなくて、スライダーが遅くなってスローボールみたいになっていたし、ストレートのキレもなくなっていた。それで9回にホームランを打たれたと思う」と振り返っているのだ。

「将来を考えてという考えではない」

 “○○○球の熱投”といえば聞こえは良いが、さすがに高校生にこれだけの負担を課すのは重たすぎる。元プロのスカウトという経歴をもつ九州国際大付の指揮官・楠城徹は「勝つためにみんなやっているわけだから、将来を考えてという考えではない」とこの起用を説明し、一方同じく元プロ野球選手である市立尼崎の竹本修監督も「球数は気になっていました。だから、できれば9回で逆転して試合を終わらせたかった。負けても試合ができるなら別ですが、あの試合展開で交代させるというのはなかなか難しい」と話している。

 プロの世界を知る人間でさえも、そういうしかないのが、今の高校野球の空気なのかもしれない。見方によっては、これは十分に“異常”であろう。

 もっとも、それはいち指揮官の力量だけではなく、熱投を美談にしてしまう我々メディア側にも責任はある。2013年春のセンバツで1試合232球を投じた安樂智大(済美・現楽天)について、その登板の是非を語っておきながら、夏の選手権になると、登板過多の熱投から目をそらすような姿勢は改めるべきだろう。常にフラットに、目の前の出来事について捉え、報じなければならない。

【次ページ】 盛岡大付に息づく、松本裕樹の反省。

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