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中村美里がついに微笑んだ日――。
金以上の価値ある、復活の銅メダル。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byJMPA

posted2016/08/08 12:30

中村美里がついに微笑んだ日――。金以上の価値ある、復活の銅メダル。<Number Web> photograph by JMPA

「(ロンドン五輪よりも)今回は少しでも多く戦う姿を見せられたのは良かったです」と応援してくれた人々を思いやるコメントをした中村。

試合時間の短縮は中村にマイナスだったが……。

 試合時間が5分から4分と短くなったことも、スタミナに自信がある中村にはマイナスにしかならなかった。

 ケルメンディとの試合から約20分後の3位決定戦を制したあと、中村は「悔しい」と涙を浮かべた。だが、表彰式では、柔らかな表情も見せた。

「このメダルを大事にしたいです」

 引き上げてくると、こうも口にした。そう思わせたのは何だったか。

ロンドン五輪後、柔道から離れて知った別の世界。

 中村は、ロンドン五輪が終わったあと、リオデジャネイロの畳に立っている自分の姿を想像できなかったという。ロンドンでの金メダルを思い描いていたから、大舞台で初戦敗退に終わったあと、すぐにリオを目指そうとは思えなかったのだ。

 2012年の秋には、古傷の膝の手術に踏み切った。柔道のためというよりも、これからの長い人生を考えて、治しておきたいと思った。

 その後、長期間のリハビリ生活が始まる。それまでになかったほど長く柔道から離れることになった。そして、それは新鮮な時間だった。

 同じようにリハビリに励むほかの競技の選手と交流を持つ中で、自費で海外遠征に行かざるを得ない競技があることも知り、自分の環境が恵まれていたことを実感したという。知り合った選手の試合を観戦に行ったり、新しい趣味を持ったり、生活に、視野に、広がりが持てた実感があった。

 その中で中村は、柔道への気持ちを取り戻した。もう一度前を向いて畳の上に戻ろうと思えた。挑戦すると決めて一歩足を踏み出し、日本代表をつかみ、たどり着いたのがリオだった。

【次ページ】 どん底からの再スタートの銅メダルに、大きな意味が。

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