リオ五輪PRESSBACK NUMBER
「海外で弱い」元世界女王が流した涙。
柔道・近藤亜美、銅獲得からの再出発。
posted2016/08/07 16:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JMPA
今大会での自身の最後の試合を戦い終えたあと、勝利したにもかかわらず、涙を流した。
「情けない」
「ほんとうに悔しくて」
柔道初日、48kg級代表の近藤亜美の口をついて出るのは、悔恨の言葉ばかりだった。
手にしたのは銅メダルだったからだ。
初戦となった2回戦、準々決勝で一本勝ちを収めた。しかも準々決勝では先に技ありを奪われ、試合終了間際に得意とする寝技で一本をとっての逆転勝利である。
勢いに乗ったかに見えた近藤だったが、準決勝でぶつかったのは世界ランク2位、昨年の世界選手権で優勝しているパウラ・パレト(アルゼンチン)。最終的に金メダルを獲得した強敵を相手に、近藤は力の差を思い知らされることになった。試合開始早々、袖釣込腰で技ありを奪われると、そのまま押し切られた。その後、3位決定戦で世界ランク1位のムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)を破った近藤だったが、銅メダルという結果に、納得が行かなかった。
2014年の世界選手権女王に漂い続けていた停滞感。
「私はまだまだでした」
世界一になれなかった悔しさをかみしめた。そして泣いた。
表彰台の真ん中に立てなかったことは、まだそれだけの実力をつけていなかったことを示しているのかもしれない。日本女子代表の南條充寿監督が指摘したように、最初の試合から堅さがあったことは、初めての大舞台からくる緊張感で、力を出し切れなかったのかもしれない。
ただ、少し引いたところから眺めてみれば、見方は変わる。
2014年の世界選手権で同大会初出場初優勝を遂げながらも、近藤にはどこか停滞感が漂っていた。
翌年の世界選手権で銅メダルにとどまったのをはじめ、海外で行なわれる国際大会で結果が出ず、「海外では弱い」とささやかれもした。実績を上げるにつれ、外国人選手からのマークもきつくなり、研究されたことが原因の1つだった。