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いいスポーツ写真の条件とは何か?
トップカメラマンが語る「一瞬の美」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAdam Pretty/Getty Images
posted2016/08/01 11:00
美しい水面、対称の構図、選手達の表情。「一瞬」を捉える写真には、動画とは異なる固有の魅力がやはりあるのだ。
わざとレンズを汚す、という意外な方法も。
時には自らが少し手を加えることで、鮮やかな情景を作ることもある。
昨年12月に行われたスキージャンプ週間で撮られたこの写真、夜景に向かってジャンプする選手を後押しするかのように光が差している。どんな最新技術を使ったのかというと、意外なほど原始的なテクニックなのだという。
「スタジアムのライトが反射するんじゃないか? と考えて、わざとレンズを汚してみたんだ。そうしたら狙い通り、光が差し込む様子をうまく捉えたんだ。あるカメラマンからは『同じイベントを20年撮り続けているけど、こんな瞬間を撮ったことがない』と言われたんだ。個人的にはものすごく恐縮したんだけど(笑)、本当に嬉しかったね」
最後に、彼自身が考える“いい写真”についての定義について聞いてみた。するとプリティは「細かいディテール、緻密さ」と表現し、こう熱弁した。
「映像や動画というのは一連の流れは撮れるけども、『パーフェクトな瞬間』は押さえられないものだと思う。何百分の1秒という瞬間を切り取るために、僕らは考え抜いて撮っている。だからこそスチール写真というのは、いつだって人の心に残るものだと思っているんだ」