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ラグビーW杯後、ジャパンの第一歩。
スコットランドに敗戦も光明あり。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byKyodo News
posted2016/06/20 11:50
タックルする小瀧尚弘(左)と稲垣啓太(右)。小瀧は2015-16シーズンのトップリーグ新人賞受賞者。今年からの代表参戦だ。
マイナス要素が揃いながらも崩壊しなかった。
準備時間の不足により、チームは熟成されていない。事前の負傷者に加え、この試合では得点源の松島幸太朗も前半15分で負傷退場。実質的に代表デビュー戦の帝京大4年生、松田力也がピッチに入った。その松田は相手のトライを防ごうとパスをはたき落とし、イエローカードとペナルティートライを献上してしまうなど、経験不足を露呈した。
それだけのマイナス要素が揃いながら、ゲームは崩壊しなかった。
「勝てる試合を落としてしまった」
そう言ったのは、両チームのフォワードで最小兵、177cmで奮闘したフランカーの金正奎だ。昨年のワールドカップに向けた日本代表には一度も参加していない新顔だが、スコットランドの猛者に対しても臆せず体を張り、タックルしてそのまま相手からボールを奪い取る“ジャッカル”で活躍した。
ロックの小瀧尚弘は、207cmの巨人ロック、スコットランドのリッチー・グレイと互角に渡り合った。SH茂野海人は、スコットランドを率いるグレイグ・レイドロー主将を向こうに回し、PKからの速攻でトライの起点を作った。ワールドカップの遺産ではない部分でも、日本代表は世界の強豪と互角に戦ったのだ。
「次は全然違うよ。しっかり準備できるからね」
「悔しいのは後半のアタックのとき。もっと強気でいけばいいのに、相手に確認しないでパスをしてしまったことです」
後半のトライチャンスを潰した場面を、金はそう振り返った。新顔らしいナイーブなミスを犯したとはいえ、試合直後に、自分のそのミスを冷静に捉えていたことに、ここからの伸びしろを感じさせた。
テストマッチでも問われるのは結果であるのは確かだが、それは、いつでも望み通りに手に入るものでもない。
結果が掴めなかったことを、どう総括して、どんな修正を施すのか。
「次は全然違うよ。しっかり準備できるからね」とマフィは言った。
ワールドカップ後のジャパンはどんな第一歩を踏み出したか。その評価を決めるのは、6月25日の第2テストマッチを見届けてからにしよう。