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内藤哲也に新日“直言”の系譜を見る。
彼の暴言三昧がなぜ喝采を受けるか。

posted2016/06/16 11:00

 
内藤哲也に新日“直言”の系譜を見る。彼の暴言三昧がなぜ喝采を受けるか。<Number Web> photograph by Essei Hara

IWGPのベルトをリングに捨ててリングを降りるパフォーマンスも、ファンは喝采で見送った。内藤哲也はどこまでいくのだろうか。

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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Essei Hara

 新日本プロレスで内藤哲也の勢いが止まらない。

 昨年6月のヒール転向以降、当初はその無法かつ無気力なファイトにブーイングが飛んでいたものの、夏の『G1クライマックス』後あたりから、じわじわとファンの支持を集めはじめ、10.12両国国技館での棚橋弘至戦では、ヒールでありながら棚橋以上の声援を受け、ついに人気爆発。

 そして今年に入ると、それが一気に加速。“春のG1”と呼ばれる『NEW JAPAN CUP』で優勝してIWGPヘビー級王座挑戦権を獲得すると、王者オカダ・カズチカを破り、ついに王座奪取に成功。しかもその試合では、どんな反則を犯しても内藤には大歓声が集まり、逆にオカダにブーイングが飛ぶという前代未聞の空気が両国を支配した。

 その後も、内藤の支持率は高まり続ける一方。いまや新日本は、内藤を中心に回っていると言っても過言ではない。

団体批判、大会の意義、なんにでも噛み付く。

 この内藤の急激なブレイクを目の当たりにして、あらためて感じたのは、プロレスラーにとって言葉は大きな武器となるということだ。

 言葉を持ったプロレスラーは強い。長州力、前田日明、天龍源一郎……時代を作ってきたレスラーは、ファンの心をつかむ言葉を持っていた。さらにさかのぼれば、アントニオ猪木もそうだったろう。

 内藤の人気もまた、その発言の数々にファンが共鳴した部分が大きい。

 昨年の『G1』公式戦で棚橋に勝利しながら、その棚橋の要求であっさりと再戦が決定すると、「この会社は結局、棚橋の言うことがすべてだから」と、団体内に目に見えないヒエラルキーがあることを示唆。

 中邑真輔がWWE入りするために新日本を退団する際、新日本が壮行試合開催を発表すると、「出ていくヤツを快く送り出すのは、他団体(WWE)に勝てないと言っているのと同じ」と痛いところを突いた。

 3月の『NEW JAPAN CUP』で優勝し、IWGPヘビー級への挑戦権を得れば「“春のG1”なんて言いながら、実質は次期挑戦者決定トーナメントじゃないの?」と、大会の謳い文句自体に疑問符を投げかける。

【次ページ】 制御不能の暴言三昧だが、喝采で迎えられている。

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