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NBAファイナルが一方的な展開に。
「超人」は「民主化」に勝てない?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2016/06/06 17:30
カリーに激しいマークをつけるキャバリアーズだが、そうすればするほどに周りが空く、という悪循環に陥っている。
スターを潰しても、脇役が決めてしまう。
2戦までのトップスコアラーは、なんとドレイモンド・グリーンで44点。カリーは29点、トンプソンは26点にとどまっている。
そして民主化の象徴、ベンチメンバーも元気だ。リビングストンが27点(第1戦の20点はお見事)、バルボサが21点、イグダーラが19点(ディフェンスとパス捌きには見とれてしまう!)と、それぞれ勝利に貢献している。
これはウォリアーズが生んだ「システム」の賜物だ。スターを潰しても、脇役が決める。「シューティング・シェア」によって、民主化を実現している。
キャバリアーズは、スター=レブロンに依存。
一方のキャバリアーズのオフェンスは、ウォーリアーズと比べると古く見えてしまうのだ。
スターがボールを持ち(特にレブロン)、自分が勝負するのか、それともパスを捌くのかを判断する。文法としては、マイケル・ジョーダンの時代から続く流れのものだ。脇役は、あくまで「おこぼれ」にあずかる感じでオフェンスに参加する。
ファイナルでのキャバリアーズの『ビッグ3』と呼ばれる3人の得点は次の通りだ。
レブロン・ジェームス 23 19
カイリー・アービング 26 10
ケビン・ラブ 17 5
スター選手が止められてしまうと第2戦のように得点が伸びず、ましてや脇役がその穴を埋めるシステムがない。今のNBAの流れである民主化からは、遠い。
少なくとも第2戦までを見る限り、キャバリアーズには、カンファレンス・ファイナルでウォリアーズを崖っぷちまで追い詰めたオクラホマシティ・サンダーのようなディフェンス面での戦略と遂行力、オフェンス面での爆発力もない。