プロレスのじかんBACK NUMBER
ノアファンが否定し続ける潮崎豪。
そんな男が握る、沈みゆく団体の命運。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/05/26 17:30
5月28日のGHC戦では、ノアに復帰してからの潮崎の、本当の意味での団体への忠誠心が試される。
なぜ危機感や対抗心が表面に出てこないのか?
1月31日、横浜文化体育館で鈴木みのると対戦し、ゴッチ式パイルドライバーでフォール負け。
3月19日、後楽園ホールではマイバッハ谷口と組んで、K.E.Sが保持するGHCタッグ王座に挑戦するが敗退。
『グローバル・タッグリーグ戦2016』でも優勝を逃した。
この際、そんな試合の結果は置いておく。問題なのは、リング上の闘いから、その立ち居振る舞いから、ノアの選手たちに団体存亡への焦りや危機感が感じられないこと。鈴木軍の選手に対する対抗心が希薄に見えることだ。
危機感や対抗心がないはずはないだろう。
では、なぜそれが現出しないのか?
なぜ、そんなにも精神的に余裕があるのか?
このクエスチョンこそが現在のノアにおける最大のテーマとなっているのだから、ファンも抗争そのものにピントを合わせづらくなっている。
最悪の状況だ。
この抗争は……徒花だと言うのか!!
そんな問題が解消されないまま、しかし、潮崎にふたたびチャンスが巡ってきた。
5月28日、『GREAT VOYAGE 2016 in OSAKA』エディオンアリーナ大阪・第1競技場で、潮崎はGHCヘビー級王者・杉浦貴に挑戦するのだ。
「俺が上がり始めた頃の新日本も、今のノアみたいにやばいって言われてたんだよ。でも、そのときの新日本はレスラーも会社も、もう一度盛り上げるために必死だった。きっとノアのやつらも『団体を守る!』っていう気持ちはあるんだろうけど、肝心のレスラーたちから結束している雰囲気が感じられない」(タイチ・鈴木軍)
常に変化を求め続ける新日本系と、大きく変化することを良しとしない全日本系。全日本と新日本の両方を経験しているタイチの言葉には、そんな出自の違いも見え隠れする。
ならばこの抗争は徒花だと言うのか?
そんなこと、あっていいわけがないだろう。ファンはいつだって考える間を与えられないほどに熱狂したい。
今度の大阪決戦だって、潮崎にだってそうさせて欲しいと、ずっと懲りずに思っている。