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ロンドンの栄光から4年間の苦悩。
鈴木聡美が挑む3つ目の“運命の一戦”。
posted2016/05/24 17:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
誰にでも「運命を変えた一戦」はある。
鈴木聡美選手の場合は、もちろんロンドン五輪だ。100m平泳ぎで銅、200m平泳ぎで銀、そして最終日のメドレーリレーで再び銅メダルを獲得。1大会3個のメダル獲得は日本の女子競泳史上初という栄誉をともなった4年前の夏に、彼女の運命は変わった。
その後の3年におよぶ大失速とともに……。
五輪選考会前、暗中模索の中で取材を決めた。
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今回のNumber PLUS「運命を変えた一戦。」のラインナップに鈴木聡美選手を加えることは、すんなり決まった。あの栄光から3年間、彼女を何が襲い、どうして不振に陥ってしまったのか。その物語を描くことは、オリンピックという4年に1度の大舞台のいわば「光と影」を描くことにもつながるのではないか――ライターの松原孝臣さんと、彼女が練習する山梨学院大学に向かう車中でそんな話をした。2月中旬、小雪まじりの曇天の日だった。
しかし、一方で大きなリスクもあった。もし4月の日本選手権兼リオ五輪代表選考会で結果が出なかったら……。水泳は一発勝負で決まるため、どんなに実績を残した選手でも、決勝で派遣標準記録を切って、2位以内に入らなければ、代表に選ばれることはない。代表に選ばれたら、ハッピーエンドとして記事をまとめることができるが、もしダメだったら、どんな記事になるのか。Number PLUSの発売は5月12日。すでに結果は出ている。私たち取材陣も暗中模索で、取材を進めるしかなかった。
「結果がどうあろうと、鈴木選手の記事を掲載したいと思います。ですから、これからの2カ月間、鈴木選手の挑戦に密着させてください!」
開口一番、山梨学院大学水泳部・神田忠彦監督にそう告げると、
「うれしいねえ。どんな形であれ、私たちを応援してくれるのは。なおさら頑張らないとね」
と、快く了承してくれた。