“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-19代表がフランスに1-3完敗。
ボランチ中山雄太は何を感じた?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/05/19 17:00
同い年にして世界トップレベルの相手と戦える水原JS杯。18歳の中山にとって、この衝撃の体験は、どう受け止められたのか。
中山「『良い経験だった』とは絶対に言いたくない」
そんな中でも気持を切らさずに、中山は中盤での運動量を意識的に上げていっているのが分かった。積極的にスペースに顔を出してボールを受け、FW堂安律やMF遠藤渓太、高木彰人などに縦パスを打ち込んで、攻撃の起点を作り出し始めた。
後半に入ると、バイタルエリアへの侵入回数も増え、高い位置でのポゼッションと、ラストパスを供給し始め、チャンスを演出していった。特にドリブルで仕掛ける堂安へのサポートの動きの質は高く、中山も「距離感に対しては、常に意識を持っている。律がドリブルに入ったときにセカンドボールへの反応や、パスコースを作って相手DFがそこを気にしてくれたら良いと思った」と、フリーランニングでも攻撃の活性化を促すようだった。
だが、立ち上がりの3点が最後まで重くのしかかり、結局は1点を返すのが精一杯。試合は1-3の敗戦に終わる。後半は一時的に日本がペースを握ったように見えたかもしれないが、それはあくまでフランスが先に3点ものリードを奪っていたことで、ある程度のペースダウンをしただけである。
「よく試合の後に『良い経験だったね』と言われるのですが、僕は試合に勝たないと良い経験だったとは絶対に言えない。この試合もそう。勝ってから言いたいです」
中山は試合後、悔しそうな表情を浮かべてこう語った。
セカンドアクションは全て後手になる日本代表。
この試合では、彼の課題もはっきりとした。そしてそれは、フランスと日本の決定的な差でもあった。
「海外特有の足の伸びだったり、初速の速さはJとはやっぱり違った。コンタクトプレーもそれ自体は問題なかったけど、当てた後の速さが凄かった。日本人には無いなと思った」と語ったように、“フランスの選手たちはセカンドアクションのスピードが明らかに日本より速かった”のだ。
ボールを受けたファーストアクションで相手に引っかかってしまう。正対される。コースを切られる。身体を当てられる。あるいはボールを奪われる――。
このような形で流れを一度断ち切られた時、日本の選手は一瞬動きが止まってしまう。だが、フランスの選手は間髪入れずにセカンドアクションを起こし、すぐにマイボールにしたり、なんとかボールに触れて味方に繋いだりと、攻撃の連続性を生み出す。日本は相手の一次攻撃を止めたにもかかわらず、すぐにセカンドを拾われたり、ボールを奪い返され、中途半端なポジショニングの間隙を突かれて崩されてしまうシーンが何度もあった。
この点に触れて彼に深く突っ込んだ質問をすると、彼はうなずきながらこう口にした。
「以前から(相手選手と)正対した後のセカンドプレーは自分の大きな課題だと思っていましたた。Jリーグでは正対してからでも自分の次のプレーで十分に対応できることが多いのですが、フランスの選手相手だとそれが間に合わない。すぐに相手に危険なエリアまで侵入されてしまっていた。もっともっとこの課題に対する意識を高めないといけないと思いました」