沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ディーマジェスティが皐月賞制す。
「飛ぶ」ではなく「沈む」ディープ産駒。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2016/04/18 11:30
マカヒキよりも少しだけ早かった仕掛けが、直線の短い中山で功を奏したディーマジェスティ。次の決戦は東京だ。
不利を受けた馬を尻目に、蛯名は「展開が向いた」。
5位入線で4着に繰り上がったエアスピネルも、リオンからそう差のない位置につけながら、不利がなければ3着もありそうな伸びを見せた。最後まで伸びつづけていたのだから、これも強い。
道中は中団につけたサトノダイヤモンドは、エアとリオンを競り落として3着。なんとか格好はつけたが、過去3戦で他馬を圧倒してきたようなパフォーマンスを発揮することはできなかった。「最後の坂で甘くなったのは、久々のぶんもあったかもしれない」とルメール。プラス6㎏の馬体重が示していたように、いくらか体に余裕があったぶんの負け、ということか。
道中は後方14番手に控えていたディーマジェスティは、大外から上がり3ハロン34秒0の脚で伸び、リオン、エア、サトノらを一気にかわし、突き抜けた。
「展開が向いた。出遅れて、あの位置で我慢することになった。かわすときは『ああ、かわすんだ』と思った(笑)。すべてが上手くいった」と蛯名。
ディープ産駒だが、ディーマジェスティは「沈む」。
これで、2012年ゴールドシップ、'14年イスラボニータ、'15年ドゥラメンテにつづき、この5年で4頭が、2月の共同通信杯からの直行で皐月賞を制したことになった。
ディーマジェスティは、昨年11月下旬に未勝利を勝った1勝馬の身でありながら、ホープフルステークス取消明けの共同通信杯でハートレー、スマートオーディンらをしりぞけている。二ノ宮調教師も蛯名も完調ではなかったと口を揃える状態で「飛び級」の強さを見せていた。
「共同通信杯のあと急に変わって、背中が伸び、前躯の筋肉が盛り上がってきた」と二ノ宮師。クラシックを勝つために絶対に必要な「成長力」を、そうした形で管理者に見せていたわけだ。
「ディープインパクト産駒はよく『飛ぶ』と言われますが、この馬は『沈む』んです」と同師が言う走法が、パワーを要するこの日の馬場に合っていたことも確かだ。
マカヒキは、ディーマジェスティよりさらに後ろから追い上げるも、2着。上がり3ハロン33秒9というメンバー中最速の瞬発力を見せたが、及ばなかった。父譲りの「飛ぶ走り」を確かにしてはいたのだが、この日の舞台設定では、ディーマジェスティの「沈む走り」に完敗した格好だ。それでも、「3強」の評価に恥じないパフォーマンスを発揮した。