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「ダメなカットがほとんどない」
カメラマンが語る羽生結弦撮影秘話。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAsami Enomoto
posted2016/04/18 07:00
特集冒頭の写真。撮影時には、「SEIMEI」冒頭のように「指2本にしたくなるよね」と笑いを誘う場面も。
「あの“叫び”の再現を」という注文には……。
人差し指をピンと前に立て「1」の形にしている写真を撮る際には、「真ん中に指を持っていくと、どうしても1ではなく、(「SEIMEI」冒頭のポーズである)指2本にしたくなるよね」と笑いを誘い、場を和ませる。
続いて、今大会もっとも印象的だったショートの演技最後に見せた“叫び”を再現してほしいとお願いしてみた。「ショートの最後の時と同じ表情をお願いします」と伝えると、「よっしゃあ! みたか!」と叫んだ、あの表情を嫌な顔もせず、作ろうとしてくれる。
だが、やはり試合の緊張感と撮影は別物。納得のいく表情ができない。「(あの時と同じように)実際に言葉を叫んでみようか」ともいうが、最後は「再現できないよー。ありゃ無理ですね」。むしろ、そこまでリクエストに応えようとしてくれることにこちらが恐縮してしまったのだった。
そうして撮影は終了。最後に羽生世代のアスリート全員にお願いしている「アンケート」に回答してもらうために用紙とペンを渡す。質問の内容は「未来の自分は?」。質問内容を読み、「これって直筆で書くんですよね」とつぶやくと、8秒ほど考えて、丁寧な文字で回答してくれたのだった……。
榎本カメラマンが最後に語る。
「羽生選手はこちらの撮影意図を汲んで、それに応えてくれるので本当に撮り易かったです。そして凄味があるきりっとした表情や抜けた笑顔もどれも決まっていて、外れと言うかダメなカットがほとんどないんですよね」