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「なんで帰ってきたん?」に応える。
柿谷曜一朗、セレッソ復帰の覚悟。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byHiroshi Nakamura
posted2016/03/08 13:30
チーム史上最年少の16歳でプロ契約してから10年。天才と呼ばれた男は今年、スイスからセレッソへ帰還した。
柿谷復帰で、練習に来るサポーターの数が増えた。
それから1年半。再び古巣に戻った柿谷は、インタビューを行った2月23日、セレッソのチーム練習場で仲間と共に汗を流していた。ドイツに移籍した山口蛍の後を受けて、今季はキャプテンに就任。背中には、再び「8番」を背負う。柿谷が尊敬するミスターセレッソ・森島寛晃の番号だ。
練習終了後、柿谷は150人近く集まったサポーターからの求めに応じて、サインや写真撮影をしていた。一人一人に丁寧に接し、笑顔を向ける。他の選手がクラブハウスに引き上げた後も、サインし続け、終わったのは、それから30分以上経った後だった。クラブ広報が語る。
「柿谷が復帰してから、練習に来ていただくサポーターの数は増えました。平日なのにこの数ですからね」
「僕のセレッソへの思いを伝えていきたい」
インタビューの冒頭、そのことを柿谷に聞くとこんな答えが返ってきた。
「サポーターの人が僕の名前が入った『8番』のユニフォームを広げて待っていてくれるのは本当に嬉しいんですが、おそらく、その何倍ものサポーターが『なんで、帰ってきたん?』って反発してると思うんです。でも、セレッソが好きやのに、セレッソの『8番』が嫌いって、おかしいやないですか。すべては僕の責任なので、何年かかってでもそうした人たちの気持ちを変えたいし、僕のセレッソへの思いを伝えていきたい」
実際、バーゼルでの柿谷は、2年間でわずか18試合の出場にとどまった。「なんで、帰ってきた」という声があるのも事実だろう。柿谷自身も、一度は自らの意思で脱いだセレッソの「8番」を再び背負う決断は、決して容易ではなかったと語る。
「中途半端な状態のまま、日本に帰ってもいいのかと。ヨーロッパでもっといろんな体験をしたい気持ちもあった。でも……」
揺れる気持ちを抑え、復帰を決めた真の理由を、柿谷は語り始めたのだった。