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「ブルペンの華はないけど実戦派」
ヤクルトのドラ1・原樹理の“素質”。
posted2016/03/08 10:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
3月3日、ヤクルトのドラフト1位ルーキー、原樹理がオープン戦2度目のマウンドに立った。先発した原は、DeNA打線を相手に4イニングを投げて4安打無失点。「今日くらい投げてくれれば問題ない」と真中満監督が評価したように、首脳陣の期待に応える好投を見せた。
目を引いたのは、投じた全47球のうち約半分をシュートが占めた点だ。原のシュートは「ライジングシュート」とも呼ばれ、浮き上がるような軌道を描くのが特徴とされる。球速は140km以上、ストレートとほぼ同じスピードで右打者の胸元に鋭く食い込んでくる。
降板後、報道陣に囲まれた原は言った。
「(予定の3イニング終了後、もう1イニング行けるかと打診され)行きたかったので行かせてもらいました。ダルビッシュ(有)さんの『変化球バイブル』にも『ブルペンの100球より実戦の1球』と書いてあるのを見たことがありますし。強気に攻めることを意識して、ピンチの場面でもシュートでつまらせてゴロを打たせることができた。シュートやカット(ボール)は、自信になりました」
開幕ローテーション入りなるか!?
2回1死二、三塁で打席に飛雄馬を迎えた場面が象徴的だった。原は、ストレート、スライダー、シュート、ストレート、シュートと投げ込み、その5球目でセカンドゴロに打ち取っている。2回以降は毎回、先頭打者に出塁を許す展開となったが、得意のシュートを軸にした配球でなんとか切り抜けた。
開幕ローテーション入りに一歩近づいたことはたしかだが、新人右腕に不安要素がないわけではない。DeNA戦、シュートでピンチをしのいだ一方で、痛打されたのもまたシュートだったからだ。筆者の誤認でなければ、この試合で打たれた4本のヒットはすべてシュートをとらえられたもの。4回先頭のロマックにはシュートを初球から3球続けた末に二塁打とされ、その後、1死三塁で打席に入った飛雄馬のバットもシュートを芯でとらえていた(結果はショートライナー)。
ライジングシュートは右打者の胸元に決まれば威力を発揮するが、コースが甘くなれば、高い分だけ打たれやすいというリスクもある。