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「ブルペンの華はないけど実戦派」
ヤクルトのドラ1・原樹理の“素質”。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/08 10:30
3月3日のDeNA戦では3イニング連続で先頭打者にヒットを浴びるも、4回を無失点に抑えた。
生き抜くために必要なさらなる成長。
対左打者では、外角のストライクゾーンからボールへ逃げるコースで空振りを奪うシーンもあった一方、真ん中高めに入ってしまった筒香嘉智の第1打席では、やはりセンター前に弾き返されている。
「右打者の内角は意図して高めに投げてもいいが、左打者の外角は低めに投げなければ危険な球になる。もし、低めに投げられないのであれば、左打者には痛い目に遭うし、プロの世界で抑え続けるのは難しくなる」(日刊スポーツ)
原の投球を見て、そう論じているのはヤクルトOBの宮本慎也氏だ。
今後、対戦を繰り返すなかで打者の目も慣れてくるだけに、原がシュートを武器にプロの世界を生き抜くためには、さらなる成長が求められそうだ。
降板後の囲み取材では、自らの“伸びる素質”を(おそらく本人は意図していないだろうが)アピールすることとなった。
教えを乞い、すぐに実践する向上心。
走者のいない場面でもセットポジションから投げていた理由を問われ、こうコメントしたのだ。
「最近、ずっと状態が上がらなくてブルペンの感じは最悪だったんです。体重が右足(軸足)に乗っていかないというか……。それで昨日、小川(泰弘)さんに相談したら、『反動を使うのではなく左足をゆっくり上げた方が、いいイメージで投げられる』とアドバイスをいただいたので、ぶっつけ本番でやってみました」
たしかに、この日の原は一目見て分かるほどゆっくりと左足を上げて投球していた。先輩に教えを請い、すぐに実践する向上心の持ち主は、さらにこんなエピソードも紹介した。
「石川(雅規)さんには『四隅にしっかり投げようとしない方がいいよ』とか、成瀬(善久)さんには『キャッチボールで力み過ぎてる』とか、毎日、ためになる言葉をいろんな人にもらっています。それぞれ言葉は違うけど、共通している部分もあるのかなと考えたり」
先発の駒不足というチーム事情を考えれば、原は一軍での実戦登板のチャンスを得やすい立場にある。まさしくダルビッシュの「ブルペンの100球より実戦の1球」という格言通り、試合の中から得られる学びを材料にして、どれだけ自身の投球術を磨いていけるかが重要だ。