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パトリック・チャンが至高の演技!
四大陸で目撃したフィギュアの真髄。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAP/AFLO

posted2016/02/24 18:20

パトリック・チャンが至高の演技!四大陸で目撃したフィギュアの真髄。<Number Web> photograph by AP/AFLO

「この大会は、他の選手のことを気にしないようにして臨みました。それが功を奏したと思います」とコメントしたチャン。

「生まれて初めて、楽しみな気持ちで氷に上がった」

 だがフリーの日は、また違った展開が待っていた。

「SP後に氷を作る責任者のところにいって、話し合いをしてきました。そしてフリーの日の朝の練習で、氷の状態が大幅に改善されたことを確認したんです」

 チャンは、「これならば自分本来の演技ができる」と確信を持ったのだという。

「最終滑走で氷の上に出たとき、さあみんなにぼくの演技を見せてやるぞ、という楽しみな気持ちになった。試合でこんな気分になったのは、おそらく人生で初めてでした」

 チャンは自らが認めるように、元々試合ではかなりあがる性格。試合直前になると「なぜ自分はこんなことをやっているのか」という思いが湧いてきて、ひどいときには胃の中身がせりあがってくるような気分になることもあるという。

 そのチャンが、氷の問題を解決できた嬉しさで、生まれて初めて「よし、見てろよ」という前向きな思いで氷にのった。その結果、あのフリーを私たちに見せてくれたのである。

芸術作品の域に達したチャンのフリー。

 ショパンの『革命のエチュード』のメロディにのって、チャンはきれいな4+3トウループから演技を開始した。ジャンプに勢いがあるだけでなく、着氷もきれいにエッジが流れてフリーレッグがつま先まで伸びている。

 3アクセル、2度目の4回転トウループ、スピンを経てそれから新たな課題となっていた後半の3アクセルをきれいに着氷し、2トウループをつけた。

 スケーティングに無駄な力が入らず、まるで何か見えない力に引っ張られているかのようなチャンの滑り――。

 すべての動きがショパンの調べと一体になっていて、もはやスポーツというよりは1つの芸術作品だった。

「心と体、氷が1つに」

 最後までノーミスで滑りきると、チャンは「イエス!」と叫んで氷にタッチし、こぶしを握りしめた。フリー203.99で自己ベスト更新。総合290.21で、SP5位からいっきに逆転優勝。チャンにとっては、3度目の四大陸選手権制覇となった。

「滑りながら、ようやく心と体、氷が1つになったという一体感がありました」

 会見でそう語ったチャン。

「でもまだまだ、これがピークではない。自分はもっと競技者として強くなっていかなくてはと思っています」

【次ページ】 フィギュア史において新たな記録を作ったボーヤン。

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