濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
シュートボクシングのエースとして。
鈴木博昭、どん底からの復活ロード。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byChiyo Yamamoto
posted2016/02/21 10:30
鈴木(左)はムエタイ戦士・タップロンの巧妙な試合運びに苦しんだ。
エースは、まず団体を支え、守らなくてはならない。
3人目のジャッジの採点が読み上げられた瞬間、ヒザから崩れ落ちた鈴木。ノーコメントで会場を後にしたが、言葉を聞くまでもなく、その心境は伝わってきた。
エースは、まず団体を支え、守らなくてはならない。
ときには自分の野心よりも優先しなければならないことがある。何より、目の前の明確な目標が見つけにくい。そういうエースの宿命の中で、鈴木はもがき苦しんでいる。
吉鷹弘、緒形健一、宍戸大樹といった歴代のエースたちも、同じ宿命と向き合ってきた。エースだからこそ、情けなさや恥ずかしさ、そして孤独を人一倍味わった。
休む間もなく、鈴木には次の試合が待っている。3月26日のRISE後楽園大会だ。他団体参戦、つまり“攻める”立場での試合とハードスケジュールが、鈴木の野性を呼び覚ますきっかけになるかもしれない。思えば彼のプロキャリアは、KO負けから始まっている。
「僕は底を知った状態から這い上がってきた。誰よりも叩き上げだと自分では思ってます」
鈴木は今、新たなスタート地点にいるのだろう。