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菅野智之のストレートが変わった!
徹底的に鍛えた“指力”の効果は?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2016/02/06 10:30
プレミア12の侍ジャパンにも選ばれた菅野智之。新ストレートは自己記録の14勝につながるか。
2キロのボールを100回以上指先だけで持ち上げる。
入団以来、シーズン中、オフを通じて菅野の体作りやコンディショニングを見てきている内藤重人トレーニングコーチによると、こいうことなのだという。
「速いボール、強いボールを投げる投手のフィニッシュの指先がどういう形になっているか。それを何人も見ていくと、必ず指先が伸び切らないで、やや手のひら側に曲がっているんです」
要はボールを放つ最後の瞬間に、指先をしっかりとボールにかけて押しているのである。
「弱いボールの投手はだいたい指先が伸び切っているんですね。そこでこの指先の力を……僕らは指力(ゆびぢから)と呼んでいるんですけど、そこを鍛えようということで、オフにはずっとトレーニングをしてきました」
ゴムチューブを指先だけにかけて引っ張る。このトレーニングを自主トレからずっと続けて、“指力”のパワーアップに取り組んできたのだという。その結果、これまでは2キロの重いボールを指先で50回持ち上げるのが限界だったが、今は100回以上持ち上げられるまでに力がついた。
その結果が、このキャンプ初ブルペンでのピッチングにいきなり現れたというわけである。
「抜けたなと思う球でも、スピンが利く」
「指のかかりは間違いなく良くなっています。抜けたなと思う球でも、高めにスピンが利いたままいったりする。去年と違った感覚で(指先から)球が離れていく」
この日のブルペンでは、ストレートを中心にスライダー、カット、カーブと変化球も投げた。指のかかりが良くなっている分、多少リリースの感覚に誤差があり、それを修正するという新たなテーマも生まれたが、ボールそのものはキレも増して、まさに異次元の初投げと言えるピッチングとなった。
昨年のキャンプは前年に痛めた肘が完全ではなく痛みもあったために、100%の仕上げはできなかった。
「一昨年に開幕で150%に仕上げてシーズンの後半に落ちてしまったので、(昨年は)最初から100で仕上げないのは予定通りといえば予定通りでしたけど、前半戦は思うように調子が上がらなかった」
それでもその中で3年連続の2桁勝利となる10勝(11敗)を挙げ、防御率はリーグ2位の1.91という数字を残した。