パワーピッチャーとして再び輝くために。

　ただ力で抑え込むだけではなく、悪いなりにゲームを作る術を学んだシーズンでもあったのだ。そうしてその術を手に持ちながら、どれだけ力で相手を抑え込むピッチングの割合が増えていくか。そこが20勝という数字への一つのポイントとなるのだろう。

　だから去年の経験を糧に、改めてもう一度、このキャンプではパワーピッチャーとしての自分を取り戻すことを意識しているわけである。

「彼の場合は一昨年に肘を痛めています。肘を痛めた投手は、どうしてもオフに肘を休ませようとしますが、逆に休ませることで緩みすぎてしまうのはマイナスなんです」

　こう語るのは内藤コーチだ。

「やりすぎはダメですけど、ある程度、肘のテンションを保つためには、休ませるのではなく、きちっと鍛えることが大事。だからこのオフの間はずっと肘の強化もしてきました。やっと1年目のいい感じが戻ってきているのは確かですね」

　肘の不安も解消した。

　そうして思い切って腕を振り、最後にボールを押す力を指先に吹き込んだ。それがこれまで本人も感じたことのないボールの力とスピンを生み出しているわけである。

「まだまだですが、この4年間で一番いいと思います」

　2月4日には2度目のブルペン入りで、53球。

「今日の方がまとまりがありましたね」

　なんとなくざわつくキャンプのムードも、この絶対エースには無関係である。