プレミアリーグの時間BACK NUMBER
現実味を増してきたレスターの優勝。
オッズは6000倍から8倍、黒星は最少。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/01/30 10:40
岡崎慎司も、FW登録の選手の中では2番目に多い出場時間と得点数を記録して存在感を発揮している。
ノープレッシャーという武器はいつまで続くか。
加えてラスト3カ月には、両ライバル以外にもマンUとチェルシーら“格上”相手のアウェイゲームが残されている。タイトルを争うクラブの中では最も困難な日程だと言えるかもしれない。
その今季終盤を戦い抜く上では、選手はおろか監督さえ欧州トップレベルでの優勝経験がない事実も気掛かりではある。これまでは、残留さえすればあとは全てがボーナスだとして「ノープレッシャー」と言われてきた。しかし、いざクラブ史上初のトップリーグ優勝が現実的となれば、チームもファンも「最初で最後のチャンス」という意識が強まる事態は想像に難くない。
但しレスターには、心身両面でコンディションを整えて優勝争いに臨めるという、マンC、アーセナル、そしてトッテナムにもない大きな利点がある。国内ではFAカップとリーグカップで早期敗退。昨季14位は、欧州でのチャンピオンズリーグともヨーロッパリーグとも無縁だ。
週に1度のリーグ戦に集中できるメリットは、リバプールが予想外の優勝争いを演じた一昨季にも証明されている。当時リバプールを率いていたブレンダン・ロジャーズは、競走馬の足下をかい潜るように走る「チワワ」に自軍を例えたが、差し詰めラニエリのレスターは、クラブの愛称にちなんで「キツネ」といったところか。
大混戦で優勝ラインが下がれば、戴冠が近づく。
勝ち点という獲物を一心不乱に追うキツネの尻を叩く指揮官は、後半戦に入っても「40ポイント獲得が目標だ」と言い続けている。しかし今回は、39ポイントを奪った前半戦を上回る成績を目指せという意味だ。
プレミア史上稀に見る混戦で番狂わせも珍しくない今季は、17シーズンぶりに優勝チームのポイント数が「80」を切るのではないかと言われている。23節後に「もう降格の心配はないのだから、あとはチャレンジあるのみだ」と笑顔を見せたラニエリの思惑通り、計79ポイント獲得となれば、レスター戴冠の可能性は十二分にある。
まさかの優勝が現実となれば、レスター界隈には「悲願成就」と同時に「一攫千金」に狂喜するファンもいることだろう。開幕当初、レスターの「クリスマス首位」に賭けていた人物の懐に、掛け金が6000倍になって戻ってきたというニュースが既に報じられているように。