プロレスのじかんBACK NUMBER
プロレス話が嫌いなプロレスラーの話。
長州力は、いつか“消える”──。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/01/16 11:00
1982年10月22日に行われた長州力vs.藤波辰爾戦。後に伝説となったノーコンテストの一戦は、「無効試合がぴったりの始まりかたでした」(原悦生)。
「えっ、こんなに動けるのに消えるの?」
長州力引退興行・『消える』──。
さすが希代の名コピーライターだ。そして、新しいシューズを注文するか否かの葛藤を打ち明けた。
「もういまの靴もボロボロだけど、それで俺が新しい靴を注文して履いてたらみんながどう思うか? 『あと何年やる気だよ?』って言われるのがオチだろ。だけどいまのボロボロの靴、滑るんだよな……」
あの長州力が、最後は後楽園ホールあたりでひっそりと「消える」。はたして、それが正解なのだろうか。
「いやいや、やってる本人としてはもったいなくもなんともないよ。でも、『消える』に向かったら俺はもっと苦しむよ。精神的にじゃなくコンディションの話で。最後の最後は『えっ、こんなに動けるのに消えるの?』って思わせるぐらいのモノをきっちり見せたいなっていう気持ちはあるよね」
長州さん。
願わくば、消える前に一度だけ──。
ボクのことをちゃんと「井上」と呼んでほしい。