プロレスのじかんBACK NUMBER
6年連続1.4のメインを務める男、
新日エース・棚橋弘至は一体何者か!?
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2015/12/25 16:10
「(1.4東京ドームでは新闘魂三銃士だった)3人が王者になるかも。全員揃ってベルトを巻いたら、どんな景色が見えてくるのか……」とコメントした棚橋。
違和感があった「新闘魂三銃士」。
デビューをして以降は、それぞれのプロレス観だったり、スタイルがどんどん確立されていくから、試合でよく衝突をするようになった。
のちに会社が自分たちと中邑(真輔)の3人を「新闘魂三銃士」と名づけて、次代を背負って立つ3人みたいな? いまだによくわからないけど、もう派閥もスタイルも違う、会話なんていっさいしていなかった3人を、そうして一括りにするっていうのがとても不自然で気持ち悪かったことを憶えている。
のちに自分は、当時の会社の目指す方向性に対する疑問から新日本を辞めた。そしてフリーとしてプロレスをして、そこから総合格闘技にもチャレンジしていった。
その間、新日本は“暗黒期”と言われ、人気の低迷、興行の不振が叫ばれていたみたいだった。だけど正直、自分はそんな状況を当時はまったく知らなかった。当然、暗黒期の中にいた棚橋弘至の姿というのも、いまだによくわかっていない。
当時の自分は、強くなることに対して一直線になるあまり、家からテレビを撤去したりしていたし、もちろんプロレス専門誌をふだん読むこともない。ただ、コンビニに並んでいる雑誌の中で、なんとなく週プロの表紙を棚橋クンが飾っていることが多いなって。ああ、いま先頭に立って新日本を引っ張っているのは棚橋クンなんだなって、なんとなく雰囲気でそう感じてはいた。
最近も知って驚いたけど、1.4ドームのメインを務めるのも今回で6年連続だとか。たぶん、「新日本がここまで盛り返すことができたのは、間違いなく俺ががんばったからだ」と、胸を張って言える立場なんだろうと思う。
じゃあ、おそらく本心なんだろう。
その後、自分は紆余曲折を経て、ふたたび新日本のリングに戻ってきた。
2012年8月。
それから1年が経ち、「いま、プロレスが楽しい」と正直な気持ちで言ったことがあった。その自分の発言に対して、棚橋クンからは「どの口が言ってんだ。寝言は寝て言え」と言われた。
その言葉の真意もやっぱりよくわからなかった。本心なのか、対立を盛り上げるためにあえて言ってるだけなのか。ただ、彼がここまで怒るのは珍しいなと思った。自分の勝手な思いかもしれないけど、そこにはほかのヤツらに対してはない、自分だけに対する特別な感情っていうものがあるのかなって。じゃあ、おそらく本心なんだろう、この怒りは本物なんだろうな。そんな気がしてた。