スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
前田健太と有力な行き先。
~大物投手玉突き現象の影響は?~
posted2015/12/19 10:40
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Nanae Suzuki
大リーグ冬の移籍市場が、けっこう荒っぽい展開を見せている。とくにFAの目玉とされた投手の動きが派手だ。
レッドソックスはデヴィッド・プライスを高値で買った。タイガースもジョーダン・ジマーマンを獲得した。ここまではまず予想どおりだったが、驚いたのはダイヤモンドバックスがザック・グリンキーと契約を結んだことだ。条件は、6年総額2億650万ドル。単年に換算すると3440万ドル(約41億円)というべらぼうな数字になる。
グリンキーは来季開幕時に32歳だ。ということは、契約最終年には37歳を迎えるわけで、この年齢まで活躍する投手はそう多くない。現役でいうと、R・A・ディッキー、バートロ・コロンの名は浮かぶものの(日本に帰った黒田博樹も)、数が限定されていることはまちがいない。グリンキーに対するドジャースの最終提示額が5年総額1億5500万ドルだったというニュースを聞いても、これぐらいが妥当だったのではないかと思う。
だがダイヤモンドバックスは「払い過ぎ」の謗りを恐れなかった。加えて彼らは、ブレーヴスからシェルビー・ミラーをトレードで獲得した。交換要員として出したエンデル・インシアルテ(外野手)やアーロン・ブレア(投手)は相当の有望株だ。つまり、代償は大きい。それでもダイヤモンドバックスは即戦力の獲得に動いた、というわけだ。
玉突き現象でマエケンの移籍先は絞られる。
だが、そうなると玉突き現象が起こる。少なくとも、前田健太を買う金はもはやない。前田の相場は譲渡金2000万ドル+5年総額6000万ドルの8000万ドルと見られている。本命視されていたダイヤモンドバックスだが、グリンキーとシェルビーを獲得したとなれば、先発5本柱はすでにそろったも同然だ(パトリック・コービン、ルービー・デラロサ、ロビー・レイがいる)。これはもう、前田の獲得から撤退したと見てよいだろう。
では、前田を買いたがっているのはどの球団か。いいかえれば、資金が十分で、先発投手が欲しい球団はどこか。
結論からいうと、候補は5~6球団だ。ドジャース、カブス、ジャイアンツ、カーディナルス、エンジェルス、マリナーズ。前田がストライク先行型の投手だけに、好ましいのは、ジャイアンツやマリナーズのように「ピッチャーズ・パーク」を本拠地とする球団だ。