スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
クラブ内の政争に、不可解な采配……。
バレンシア、唐突な監督交代劇の内幕。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2015/12/04 10:40
就任2年目のヌーノ・エスピリト・サント監督は第13節のセビージャ戦後、辞任を発表。昨季はファンの心を掴んだように見えたのだが……。
サッカー素人のオーナーが自ら人選?
だが強化スタッフが誰もいなくなった今、一体誰が監督を探すというのか。
「将来的に可能性はありますが、現状スポーツディレクターを探してはいません。優先すべきは監督探しです。(監督選びは)非常に重要な決断なので、ピーター・リムが直接従事します。新監督はメンデスとは無関係の人物になるでしょう」
シンガポール在住でサッカーの素人であるオーナーが、もし本当に友人メンデスの助言を受けることなく、自身の判断でその重要な決断を下すのだとしたら、それこそ恐ろしいことである。
……と原稿を締めくくるつもりだった矢先、さっそく新監督が発表された。
マンチェスター・ユナイテッド一筋、つまりバレンシアともリーガとも無縁のキャリアを貫いた“ワンクラブマン”は、当然ながらスペイン語は話せず、指導者としての経験は3年前から務めているイングランド代表のアシスタントコーチしかなく、しかも6月にEUROを控える代表の仕事も兼任するという。
今季終了までのつなぎ役に求められる要素を何一つ持ち合わせていないように思えるそのギャリー・ネビルは、やはりというかリムの親しい友人である。
残念ながら、バレンシアの混乱はまだまだ続きそうだ。