プロレスのじかんBACK NUMBER
オカダ・カズチカ、天龍戦の告白。
不変のプロレス魂。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2015/11/24 15:40
まったくの遠慮無しに、いつも通りのドロップキックを連発していったオカダ。そして、それを受け続けた37歳年上の天龍。
ビッグマウスに隠された昭和の男への敬意。
「ずっと生意気でいろよ」
若手時代、何かとかわいがってくれた先輩・中邑真輔に言われたこの言葉をずっと実践しているかのようだ。プロレスの試合という部分は棚橋と闘うことで、プロレスラーとしての姿勢に関しては中邑から教わったことがオカダ・カズチカの一部分になっていると本人も言う。
「べつにまわりが騒いでるほど充実感とかあるわけでもなく、オファーがきた試合をしたっていうだけですからね。だから天龍戦で何か変わったかと聞かれてもボクは何も変わってないですし。本当にただ、試合をしたっていうだけで」
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しかし、見事に介錯を務めあげたあと、リング中央で横たわる天龍に対し、オカダが深々とお辞儀をしたシーンがあった。あの試合のハイライトシーンのひとつだったと思うが、あのときのオカダの心境はいかなるものだったのか。
「べつにあそこで両手を広げてね、踏みつけることもできましたけど……」
一拍置いて。
「なんでかわからないけど、『またやりたいな』って思いましたね。もう叶わないですけど、これで終わりなのが嫌だなって思いました。天龍さんが全盛期のときにもやってみたかったなって。それと、ここじゃ言えないような気持ちもありましたし、それなりのリスペクトも……いろんな意味を含めてあそこで頭を下げましたね」
「ボクのほうが凄いというのは変わらない」
ふたたび一拍置いて。
「それでもボクのほうが凄いというのは何ら変わらないですけどね(笑)。あの日、ほかにもいろんなバラエティに富んだ試合があったっスけど、業界トップのボクが最後にしっかり魅せられたから大会が締まりましたよね」
ずっと生意気でいること。それがオカダ・カズチカという男の感性、しぶとさだ。
長州は天龍とオカダを“異なる価値観”と言うが、本当にそうだろうか。
「結局、プロレスって何も変わってないんですよ」
オカダが試合に込めたかったメッセージは、確実に昭和のプロレスファンにも突き刺さったと思う。オカダは何も変わっていないかもしれないが、ファンのオカダを見る目は確実に変わったのだ。