フットボール“新語録”BACK NUMBER
公式戦で計測デバイス使用可能に。
IT機器がもたらすサッカー革命。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/17 10:30
川崎フロンターレ戦では香川の身に付ける“スポーツブラ”のような装具が話題になった。
ドルトムントのトゥヘル監督も早速。
ドルトムントのトゥヘル監督はあらゆる手法をサッカーに取り入れる指導者で、小麦や砂糖を減らす食事管理に加え、生体エネルギーのセラピストを3週間に1度のペースでクラブハウスに招いている(たとえば磁力マットの上でストレッチを行う)。当然、GPSデバイスに関心を抱かないわけがない。ドルトムントの新監督に就任すると、すぐにカタパルト社のシステムを導入した。
現在、ACミラン、ハノーファー、レバークーゼン、マインツ、レスター、ニューカッスル、アヤックス、セルティック、ブラジル代表、コロンビア代表などが同社の製品のユーザーだ。
GPSデバイスを開発しているのはカタパルト社だけでなく、他にはオーストラリアのGPSports社(レアル・マドリー、チェルシー、バイエルンなど)、アイルランドのスタッツスポーツ社(バルセロナ、ユベントス、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプールなど)が大手だ。
ただし昨年、カタパルト社がGPSports社を買収しており、今後は2つのグループがシェアを巡ってしのぎを削ることになるだろう。ちなみに日本代表は、2014年W杯の準備期間および大会中の練習においてアディダス社のデバイスを使用していた。
オフザボールの研究を大きく変えるインパクト。
個人的に興味を持ったのは、ジャイロスコープとコンパスの機能によって、バックステップの回数や、ボールを受ける前にどんな動きをしたかを調べられるということだ。現代サッカーでは、パスを引き出す動きが極めて重要になっている。そういうオフザボールの動きの分析に、GPSデバイスは大きな効果を発揮するだろう。
デバイスの買取価格は1つ数十万円で、全員分揃えると初期投資に数百万円かかる。クラブとしては新人をひとり雇える額だ(レンタルなら月に1デバイスあたり1万円前後)。だが、うまく使えばケガの予防や組織力アップが期待でき、十分に元は取れるはずである。
おそらく2018年ロシアW杯では、GPSデバイスがスタンダードになっているだろう。Jリーグでの解禁も時間の問題だ。これからの指導者講習では、テクノロジーの利用も必須科目になりそうだ。