フットボール“新語録”BACK NUMBER
公式戦で計測デバイス使用可能に。
IT機器がもたらすサッカー革命。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/17 10:30
川崎フロンターレ戦では香川の身に付ける“スポーツブラ”のような装具が話題になった。
香川らがしていた“ブラジャー”のような装具。
その変革の中で存在感を示しそうなのが、オーストラリア発のカタパルト社だ。
7月7日、等々力陸上競技場で川崎フロンターレ対ドルトムントの親善試合が行われた際、香川真司らドルトムントの選手がスポーツブラジャーのような装具を身につけていることが話題になった。
その“ブラジャー”に、カタパルト社の最新技術が詰まっている。同社の唯一の日本人スタッフ、斎藤兼氏はこう説明する。
「スポーツブラのようなウェアの背中の部分に、小さなデバイスを入れるポケットがあります。GNSS(GPSは米軍が開発したもの。ロシアなどの衛星を含めた総称がGNSS)によって位置情報がわかるだけでなく、デバイスには3つのセンサー、『加速度計』、『ジャイロスコープ』、『磁力計(コンパス)』が内蔵されていて、様々なデータが内部メモリーに記録されます。それによってトラッキングカメラでは不可能なデータを得られるようになりました」
走行距離などはもちろん、傾きや向きも。
走行距離、加速回数、減速回数、方向転換回数、ヒートマップ、心拍数、運動負荷、ジャンプ回数、短時間におけるスプリント回数、動作の左右対称性、速度――。
ジャイロスコープによって体の傾きがわかり、さらにコンパスによって体がどちらを向いているかがわかるからこそ、細かいデータ測定が可能になる。充電器を兼ねた専用ドックにデバイスを置くと、自動的にパソコンに同期され、手動でデータをクラウドにアップできる。
また、GK専用のデバイスがあり、左右に跳んだ回数、跳んだあとに元の姿勢に戻るスピードを計測することができる。
この種の技術がオーストラリアで発展したのは、同国が1976年モントリオール五輪で金メダルゼロに終わったことを受け、政府が1981年に国立スポーツ研究所を立ち上げたのがきっかけだった。ウェアラブルデバイスの開発が進み、2006年に技術者2人が独立してカタパルト社を設立。次第に五輪選手だけでなくプロチームスポーツも対象とし、世界をリードする会社になった。東京五輪を控える日本にとっても参考になる取り組みだろう。