錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

沸騰するテニス人気が錦織圭に集中。
異常な注目度を軽減してあげたいが……。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2015/10/19 10:40

沸騰するテニス人気が錦織圭に集中。異常な注目度を軽減してあげたいが……。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

楽天オープンの準決勝で敗退直後の錦織。完全満員となった1万人観客が見つめる中、静かにコートを後にした。

錦織戦の観客席から響く不思議な“音”?

 海外では経験しない類いの応援という意味で、他にも印象的なことがあった。サム・クエリーとの2回戦。錦織がリターンゲームでマッチポイントを握ると、クエリーのファーストサーブがフォルトすると、コロシアムの中にこんな声が響き渡った。

「シィ~ッ」

 字面だけだとよくわからないと思うが、これは「静かにして」の「シィ~ッ」ではない。「ヨシッ」あるいは「ヨッシャ」の末尾が、観客席から発する人の思いとともに伸びてやたらと耳につく音になっているのである。

 錦織が全米オープン前の記者会見で「観客にどんな応援をしてほしいか」と聞かれたとき、「あまり周りの声が耳に入らないので特にはないですけど、強いていえば、日本での試合で相手のサーブが入らなかったときに『ヨシッ』というのをやめてほしい(笑)」と言ったのだが、まさにこの状況のことを言っていたのだと理解した。

 実は、会見でそれを聞いたときは、「ヨシッ」などという観客のつぶやきがコートに届くものだろうかと半信半疑で聞いていたのだが、あらためて錦織の言っていた意味がわかった。その声が苦手と言いつつクエリー戦での錦織は、このセカンドサーブのチャンスをきっちりとものにして快勝したのだが……。

決勝が錦織対ワウリンカになれば、という祈り。

 昨年の全米オープンの決勝カード、注目のマリン・チリッチとの大勝負にも勝ち、錦織は順調だった。大会関係者は錦織の決勝進出を、期待というより確信すらしていたようで、全米オープンのリベンジマッチとなるはずだったブノワ・ペールとの準決勝で錦織が崖っぷちに立たされると、まさに戦々恐々といったムードに。その様子に、錦織が背負っている明日……明日の決勝という意味だけではない“日本テニス界の明日”の重さについてもまたあらためて感じずにはいられなかった。

 上の山からは第1シードのスタン・ワウリンカが順当に決勝に勝ち進んでおり、錦織が勝っていれば、昨年の錦織対ミロシュ・ラオニッチに続いて最高の決勝戦が実現したのだが、ワウリンカ対ペールでは盛り上がり不足は否めなかった。お隣の中国・北京の決勝戦がノバク・ジョコビッチとラファエル・ナダルという事実を知って急に恨めしくなったりする。

【次ページ】 ビッグ4が出なくなって久しい大会だが……。

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