錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

沸騰するテニス人気が錦織圭に集中。
異常な注目度を軽減してあげたいが……。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2015/10/19 10:40

沸騰するテニス人気が錦織圭に集中。異常な注目度を軽減してあげたいが……。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

楽天オープンの準決勝で敗退直後の錦織。完全満員となった1万人観客が見つめる中、静かにコートを後にした。

ビッグ4が出なくなって久しい大会だが……。

 東京に〈ビッグ4〉が誰も出場しなくなって今年が3年目だ。ナダルが最後に出場したのは2011年。ロジャー・フェデラーは'06年に一度出場したきりだ。アンディ・マレーは全米オープンを制した'12年が最後。ジョコビッチは日本に来たことがないが、北京には'09年からほぼ毎年出場している。

 それでも錦織さえいれば集客の点で〈ビッグ4〉は必要なく、昨年の予選からの入場者数は、全米オープンのフィーバー冷めやらぬ時期だったこともあり史上最多の8万5200人あまりを記録した。今や日本テニス協会の年間収益は半分が楽天オープンの収入だという。もちろん錦織も他人のためだけにやっているわけではないから、そう感謝ばかりする必要もないが、今や錦織がいなければ成り立たない大会になっていることは確かだ。

錦織以外でも面白い選手がたくさんいた!?

 しかし、ビッグ4はいなくても今大会には〈通〉好みの選手が少なくなかった。

 錦織が1回戦で対戦したボルナ・チョリッチや、翌週の上海の初戦で対戦することになるニック・キリオスといった若手の代表格に加え、前述のように全米オープン覇者のチリッチ、錦織が“無人島に連れて行きたい選手”に挙げたアレクサンドル・ドルゴポロフ、錦織がまだ勝ったことのないリシャール・ガスケ、テニス界屈指のイケメンとも言われるフェリシアーノ・ロペス、テニス界の反逆児バーナード・トミック……。

 賞金が北京のほぼ半分で、施設規模の格差を考えれば、なおさらありがたい顔ぶれに思える。彼らの大半が1回戦で負けたことは問題だったが、もう一つ肝心なことは有明に押し寄せるファンの中に〈通〉がどのくらいいるかということだ。

 つまり錦織が負けるというシナリオに、メディアもファンも含めた人々がどれだけ対応できるかということだろう。

 去年、初来日したというATPの最高責任者クリス・カーモード氏は大会の盛況ぶりに感激しながらも、「錦織選手が背負っている重圧ははかりしれない。皆さん、そのことを理解し、彼にどうかやさしくしてあげてください」と言って会場を去った。「やさしくする」という命題は意外に難しいが、単なる錦織人気ではないテニスの土壌を育てることはその具体的行動の一つなのかもしれない。

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