錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

錦織圭はリーダーとしても一流?
チームの空気を軽くする「ゆるさ」。

posted2015/09/29 11:35

 
錦織圭はリーダーとしても一流?チームの空気を軽くする「ゆるさ」。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

全米OPの苦い敗北から一転、仲間と共にキッチリとワールドグループ残留を決めた錦織。

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 錦織圭はまたデビスカップで復活し、日本チームを〈世界〉のステージ残留へ導いた。

「また」というのは前例があるからだ。一昨年、全米オープンでまさかの1回戦負けを喫した錦織は、その後のデビスカップに救われた。というより、転機にした。自らの力で。トップ10入りを目前にしたプレッシャーの中で疲れきったヨーロッパシーズンのあと、「活気が湧いてこない」という〈燃え尽き〉に似た心配な状況だったが、有明を埋めたファンとともに闘志の再構築を達成し、シングルスで圧倒的な2勝を挙げた。

 ワールドグループ復帰をかけたプレーオフ、奇しくもこのときの相手は今回と同じコロンビアだった。錦織が戦った相手も、今回と同じサンティアゴ・ヒラルドとアレハンドロ・ファージャだった。続く楽天オープンの前には、「デ杯がいいタイミングで自分に刺激を与えてくれたと思う。情熱と自信も戻ってきた」と話した。

 今回の全米オープンの1回戦敗退はそういったメンタルの問題が原因ではなかったが、このあとに控えているのはやはりディフェンド(世界ランクにかかわるポイント換算法)のポイントが多いアジアシリーズであり、そのスタートが膨大な期待を背負って連覇へ挑む楽天オープンである。はからずも1カ月も空くことになったところへ、刺激の強いデビスカップが横たわっていたのは運命的とも思えた。

2年前と違い、代表最年長になった。

 2年前と違ったのはメンバーの顔ぶれだ。初めてデビスカップに出場した'08年から7年、今回初めて錦織が代表メンバーの中で最年長になった。25歳の錦織を筆頭に、22歳のダニエル太郎、19歳の西岡良仁、23歳の内山靖崇。西岡と内山はフロリダのIMGアカデミーの後輩だ。エースというだけではなくチームリーダーとしての錦織の自覚は、いっそう高まったのではないだろうか。

 ホームとアウェーの差も大きかった。しかし、1回戦のアウェーでのカナダ戦でも、「自分を応援している声だと思ってプレーしていた」と言ってのけた錦織だ。自分のミスに打ち鳴らされる笛や太鼓も、激励のサンバとばかりに心躍らせていたことだろう。

 初日、ダニエルが相手エースのヒラルドにフルセットの末敗れ、錦織はファージャをタイブレーク2つの接戦ながらストレートセットで片付けた。2日目、内山/西岡がダブルス巧者のフアンセバスチャン・カバル/ロベルト・ファラに1セット先取から逆転負け。日本の1-2で迎えた最終日、錦織はヒラルドとのエース対決を危なげなく制した。安堵するとともに、3月のカナダ戦が頭をよぎる。また、錦織の2勝が無駄になる結末なのではないかと……。

【次ページ】 錦織の意外なコメントがチームのムードを作りだした。

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