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日本GPでハミルトンとアロンソに明暗。
セナと並ぶ勝利数と“GP2”の屈辱。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2015/09/28 11:40
レースフィニッシュ直後、マシンの上で優勝の喜びを爆発させたハミルトン。
「もし生きていたらもっと勝っていたはず」
これで勝利数ではセナに並んだハミルトン。だが、セナを超えたとは思っていない。
「だって、アイルトンがもしイモラであのような事故に遭わずに、レースを続けていたら、もっとたくさんのレースに勝ったはずだからね。今後は、彼の分まで勝ち続けたい。もし彼がいまでも生きていたら、きっと友達になれたはずだから」
ハミルトンとは対照的に、この日、鈴鹿で怒りを爆発させたのがアロンソである。
アロンソもまた、セナを尊敬しているドライバーのひとりだ。3歳のとき、父親に買ってもらったゴーカートを、セナがドライブしていたマクラーレン・ホンダのカラーリングにしたほどだった。
だが、アロンソが加入した今年のマクラーレン・ホンダは、アロンソの期待を下回るものだった。それはマクラーレン・ホンダの一員として初めて臨んだ日本GPでも同じだった。
特にさまざまなコーナーが複雑に組み合わされ、長いストレートが2本もある鈴鹿は、車体性能とパワーが問われるだけに、現在のマクラーレン・ホンダの課題が一層浮き彫りになった。
天国のセナは、この2人をどう見たか……。
スタートで好ダッシュを決め、序盤から入賞圏内を走行していたものの、その後、周回を重ねるごとにライバル勢にオーバーテイクされていったアロンソは無線でこう叫んで、マクラーレン・ホンダの現状を嘆いた。
「GP2に乗ってる気分だ。惨めだよ」
GP2とはF1直下のカテゴリーで、アロンソは現在のマクラーレン・ホンダのマシンは、F1のレベルにないということを無線でチームに訴えていたのである。
セナの41勝のうち、30勝はマクラーレン・ホンダで挙げたもの。しかし、そのセナも鈴鹿では喜びとともに、嘆き悲しんだものだった。
特別な場所で表彰台の頂点に立って歓喜したハミルトンと、ノーポイントに終わって激昂したアロンソ。
セナはこの日、天国からどのように2人の走りを見ていたのだろうか……。