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メイウェザー、49戦目の“最終戦”。
勝敗よりも勝ち方、そして「その後」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2015/09/03 10:40
フロイド・メイウェザーの公開練習には、多くのメディアが詰め掛けた。ボクシング界の誇る「ダークヒーロー」は果たしてどんな“最終戦”を見せるのだろうか。
メイウェザーは引退を強調しているが、果たして……。
オスカー・デラホーヤ、サウル・アルバレス、そしてパッキャオたちトップボクサーの強打を次々に封じ込めてきたメイウェザーが、ここに来てベルトのパンチを浴びること自体は想像しにくい。過去にグローブを着いてダウンを取られた経験はあるにせよ、スピード、防御テクニック、反射神経によってベルトの強打を空回りさせるだろう。
「金は十分に稼いだ。もうラストだ」
メイウェザーは2度目の引退を何度も強調しているが、筆者もその言葉をまったく信じていない。
2013年に米放送局「ショータイム」「CBS」と6試合2億ドルの大型契約を結んでおり、単にこのベルト戦が契約ラストマッチの6試合目になるだけのことだ、と解釈している。商品価値が落ちていれば“ザ・マネー”(金の亡者)と呼ばれるメイウェザーの引退発言は頷けるとしても、決して事実はそうではない。
5月のパッキャオ戦は有料放送の加入者が過去最高となる440万件に達し、総興行収入は650億円を超えたという。全世界が注目したまさに「世紀の一戦」であり、メイウェザー自身も200億円以上の大金を手にしたと言われている。あの勝利を経て、商品価値は下がるどころか上がっている。
“ロッキー超え”を求める声が出ることも計算済みか。
もし49連勝目を久々のKOで飾ったとしたら、“ロッキー超え”を期待する風が吹くことを計算に入れているように思える。テレビ局からの新たな契約はさらに魅力的な金額で、メイウェザーに提示されるに違いない。
マルシアノとメイウェザーでは、スタイルも美学も、歩んできた道のりも違う。
伝説の王者に肩を並べたとき、メイウェザーは何を思い、何を口にするのか。
つい想像してしまう。
「引退は撤回しよう。まだまだ稼ぎ足らないんだよ」
憎々しく、挑発的に語るスーパースターの姿を――。