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メイウェザー、49戦目の“最終戦”。
勝敗よりも勝ち方、そして「その後」。
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2015/09/03 10:40

フロイド・メイウェザーの公開練習には、多くのメディアが詰め掛けた。ボクシング界の誇る「ダークヒーロー」は果たしてどんな“最終戦”を見せるのだろうか。
アンドレ・ベルトとのオッズ差は80対1の大差!
ラストマッチの相手を務めるWBA世界ウエルター級暫定王者アンドレ・ベルト(米国)では力不足という感は否めない。30勝(23KO)3敗のキャリアで、WBC、IBF元王者の肩書もあるのだが、31歳の強打者はキャリアの下り坂にあるからだ。
ハイチ系米国人のベルトはアマ全米王者の肩書を持ち、21戦無敗のままメイウェザーの一度目の引退に伴って空位のWBC王座を獲得。スター候補生に名乗りを挙げながらも、2011年4月にビクター・オルティスに判定で敗れて6度目の防衛に失敗した。IBF王座獲得で復調するかと思われたが、ロバート・ゲレロ、ヘスス・ソト・カラス相手に立て続けに敗れ、評価を一気に下げてしまった。
ミスマッチとの声は強い。対戦発表時のオッズでは「80-1」とメイウェザーを圧倒的に支持したものもある。ボクシングファンの興味はどちらが勝つかではなく、もはや「メイウェザーがどうやって勝つか」にあると言っていい。
ベルトは強烈な右ストレート、左右のフックを誇る一方で、とにかく打たれると脆い。ダウンの奪い合いとなったオルティス戦ばかりでなく、ゲレロにもソト・カラスにもダウンを奪われて敗北している。つまりメイウェザーのKO勝利に期待が集まっている。
ファンを納得させたKOは2007年まで遡らなければない。
メイウェザーはここ6戦が判定勝ち。KOとなれば2011年9月以来、4年ぶりとなる。前回KOした相手というのが、ベルトをダウンの応酬の末に下したオルティスだから面白い。ただKOとはいっても頭突きの反則を詫びてハグしてきたオルティスが離れるや否や、不意打ちの左フック、右ストレートを見舞って倒している。
ブレイクと捉えてガードを降ろしていたオルティスに対し、メイウェザーがブレイクではないと判断してのKO劇は物議をかもした(結果的にレフェリーはブレイクしておらず問題ないが、一方でメイウェザーの行為は非紳士的という見方もある)。
それこそボクシングファンを納得させたKO勝ちともなると、2007年12月の“ヒットマン”リッキー・ハットン戦までさかのぼる。プレッシャーを強めてくるハットンにカウンターで左フックを浴びせてダウンを奪い、TKOに持ち込んだのは鮮やかだった。
打たれ脆い一面をのぞかせるベルトが打ち気にはやれば、あのカウンターが火を噴く可能性は十分。石橋を叩いて渡る慎重なスタイルを崩すことはないにしても、どこかでKOに色気を見せてくるような気がしてならない。