ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
武藤嘉紀が早くもホットライン完成!
ブンデス初得点にいたる3つの要素。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/08/31 12:30
監督、チームメイト、サポーター、そしてメディアの全てから歓待を受けている武藤嘉紀。この2ゴールはそのステップをさらに加速させることだろう。
ピッチ上で誰よりもパスを要求する姿勢。
そして、3つ目の要因。それはコミュニケーションをとることを惜しまない武藤の姿勢だ。実はこれこそが、ゴールを決められた最大の要因かもしれない。
もしも、パスを受けた回数やパスを出した回数のように、パスを呼ぶ声をカメラがカウントできるのならば、武藤が1試合にパスを要求する回数はおそらくリーグトップクラスだろう。練習でも試合でも、彼は何度も何度もよく通る高い声でパスを要求し続けてきた。
マインツにおいて、武藤が入団してからの取り組みを理解するのに、スペイン人MFのサンペリオとの関係性ほど象徴的な事柄は他にないだろう。
開幕前にエビアンで行なわれたトレーニングキャンプで相部屋となったサンペリオと武藤は、ピッチの外でもコミュニケーションをとってきた。大学で第二外国語として習ったスペイン語でジョークを飛ばすのもそうだ。ただそれ以上に、ピッチの上でお互いの特長を活かし合うためにあらゆる手をつくしてきた点は見逃せない。
7月29日、ラツィオとの練習試合でのこと。カウンターのシーンでサンペリオがドリブルで前へボールを運んでいた。その前方にいた武藤は、自らのマークについているディフェンダーから離れるため、左サイドの裏に動きだすフリをしてから、中央のスペースへ飛び出した。この動きで相手ディフェンダーを置き去りには出来たのだが、このフェイントに味方であるサンペリオもつられてしまい、彼は左サイドのスペースにパスを出してしまった。
自分の理想の動きと、味方のスタイルの間で。
その翌週に行なわれたドイツ杯のコットブス戦でも、サンぺリオと武藤の間で同じようなシーンがあり、呼吸が合わないことがあった。武藤はコットブス戦のあとに以下のように話している。
「あのシーンについても、ハイロ(サンペリオ)と話したんですけど、やっぱり『(ドリブルをしながらだと)最初の動きしか見えない』ということだったので、それも合わせていかないといけないです。自分はワンクッションいれて、相手のDFがつられたあとに、裏に出ていきたいという気持ちがあるのですが……。これで2回目かな、この前の試合でもこういうシーンがあったので、そこはハイロにも合わせていかないといけないかな」
後日、そもそもどのタイミングでサンペリオと話をしていたのだろうかとたずねると、武藤は当然のように、こう答えていた。
「試合のすぐ後、ですよ。彼も少し英語を話すので、英語で話をしましたね」