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錦織圭、立ちはだかる“BIG3”に挑む。
前哨戦で見せた不安も払拭、全米へ!
posted2015/08/27 11:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
8月10日からのロジャーズ・カップ(カナダ・モントリオール)で、前週のシティ・オープン(アメリカ・ワシントン)に続く2週連続優勝を狙った錦織圭は、準決勝でアンディ・マリーに3-6、0-6のストレートで敗れた。準々決勝ではこれまで7度対戦して全敗のラファエル・ナダルを破っており、ATPマスターズ1000初制覇の期待も高まったが、悲願達成は持ち越しとなった。
ワシントンの決勝から中2日で迎えたこの大会。初戦の2回戦から準々決勝のナダル戦までは素晴らしいプレーだった。特にダビド・ゴファンとの3回戦ではストロークが火を吹いた。錦織自身、後日のブログに「この2週間で一番良かった」「攻めの部分が良く、自信をもって打ち込んでいけました」と書くほどの出来だった。ナダル戦も、過去の苦戦はなんだったのかと思わせるような快勝で、錦織は「全部良かった」と胸を張った。
調子よく勝ち進んでいたが、負傷が……。
しかし、連戦で疲労がたまり、準決勝では第1セット終盤に足が止まった。マリーは相手の息の根を止めようと積極的にオープンスペースに展開、錦織がこれを見送る場面が増えた。インターネットでツアー大会を動画配信する「テニスTV」のコメンテーターは「詳細はわからないが、負傷に近い状態のようだ」と実況した。しかし、会場のファンは身体的な異変に気づかず、ボールを追わない錦織にブーイングを浴びせる場面もあった。
錦織はトレーナーを呼ぶこともなく、動けないまま淡々とゲームを進めた。試合後、「第1セット途中から下半身に痛みが出た」と明かした。のちに臀部に痛みがあったことが明らかになり、次週のウェスタン&サザンオープン(アメリカ・シンシナティ)は欠場することになる。
頼みのフットワークが使えず、挙げ句の果てにブーイングまで浴びたのは気の毒だったが、まだ動けていた第1セットの試合内容も、マリーが一枚上手だった。返ってくるのはほとんどすべて嫌なボール、厳しいボールだった。錦織がラリーのテンポを上げたくても、バックハンドスライスで時間を稼がれ、遅いペースに引きずり込まれる。そこから一転、速いボールも飛んできた。ラリーを支配したのは、緩急を自在に操るマリーだった。