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「取材に時間をあてすぎた」
競歩・鈴木雄介が抱えた自覚と葛藤。 

text by

宝田将志

宝田将志Shoji Takarada

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photograph byAFLO

posted2015/08/24 11:30

「取材に時間をあてすぎた」競歩・鈴木雄介が抱えた自覚と葛藤。<Number Web> photograph by AFLO

最後まで行こうと思えば行けた。しかし「本番」のリオのために、表情をゆがめながらも鈴木雄介はリタイアを決断した。その無念はいかほどか。

日本における競歩の立ち位置を変えるために。

 恨み言の響きはなかった。ただ一瞬、記者たちの側には何とも言えない緊張した空気が漂った。多くの記者が世界記録を出した後、鈴木に取材の時間を作ってもらった。私もその1人だ。代表発表会見などでも“メンバーの顔”として囲んで話を聞いた。そして、鈴木はそこで競歩への思いを語ってくれた。

「競歩は周回コースなんで、銀座の歩行者天国とかでレースをできたらいいですよね」「買い物ついでに見てもらったり、コーヒー片手に見てもらってもいい」

 競歩のスピード、展開の妙味を体感してもらいたいと願う熱が、そこにはあった。

 例えば、室伏広治が、その抜群の実績と探究心でハンマー投げの奥深さを世に知らしめたように、今、鈴木は日本における競歩の立ち位置を変えようとしている。

 世間と、メディアと、競技と、自分。どう折り合いをつけていくか。スポーツ界で「ヒーロー」と呼ばれる人達たちは、各自のやり方で、その道を通ってきた。

 願わくば、来年のリオで、5年後の東京で、鈴木が「世界のエース」として存分に発信できればいい。

 その時、今日鈴木を囲んだ記者たちは、それぞれ感じた思いに従ってパソコンのキーボードに向かうはずだ。

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