甲子園の風BACK NUMBER
「清宮世代」が輝いた今年の甲子園。
学年不問の起用が彼らを成長させる。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/22 10:30
清宮が初ホームランを記録した東海大甲府戦のあと、和泉実監督は「1本打たせてやりたいと思っていた」とコメント。自信をつけた清宮は次の九国大付戦でもアーチを飾った。
1年生が上級生と仲睦まじくできる時代。
少し前までの高校野球であれば、1年生ともなれば上級生を前に萎縮してしまったが故に、本来のパフォーマンスを出しきれずに終わる。そんなケースは少なくなかった。
しかし今は、清宮が上級生たちと仲睦まじくベンチではしゃいでいる姿が度々映像で映し出されていたように、もうそんな時代ではなくなったのだろう。
準決勝で早実を敗り、チームを準優勝に導いた仙台育英の佐々木順一朗監督は、清宮を引き合いに出しながらこう話す。
「清宮君なんかを見ていると、本当にのびのびプレーしていますよね。チームの雰囲気がいいんでしょう。怖いもの知らずというか、失うものなんてないでしょう」
その佐々木監督も、この大会で1年生の西巻賢二を起用していた。
学年関係なくプレーすることのメリット。
「うまいし冷静。3年生の誰よりも状況を見て動ける大人な子です」と称される1年生は、スタメンは一度もなかったものの全試合に出場。ファースト、セカンド、サードと守備で万能さを披露し、打撃でも準々決勝と決勝で安打を記録した。
西巻は上級生との関係に触れながら、甲子園での経験を感慨深げに語る。
「僕は本来ショートなんですけど、レギュラーの平沢(大河)さんは、先輩なのにほんと普通というか。1年生の自分に対しても3年生と同じように接してくれるんで、緊張することなく自信を持って試合に入れましたし、いい経験と成長もさせてもらいました」
今はまだ1年生だが、新チームになれば下級生とはいえ主軸として結果を求められる存在になるだろうし、責任も増してくる。
1年生から3年連続で甲子園に出場した作新学院の4番打者、朝山広憲は下級生時代と今の自分をこのように比較していた。
「野球をやっている以上、学年は関係ないというか。自分もそういう気持ちで1年からやってきましたし、先輩たちもそういう自分を引っ張ってくれたんで。3年生になった今年、『今度は自分がプレーで引っ張っていこう』と強く思えるのは、やっぱり1年生から甲子園を経験できたからだと思います」