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プレミア2戦目で得た確かな評価。
初得点の岡崎慎司が更に望むもの。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2015/08/17 11:30
プレミア挑戦2試合目にしてゴールを決めた岡崎慎司。ブンデスリーガとは異なるスタイルのリーグに早くも適応すると同時に、得点を奪う能力の高さをファンに見せ付けた。
自ら1点、起点となって2点目を決めた第2節。
そして、第2節での初ゴール。クロスボールを予測し、早い動きだしからペナルティエリアへ侵入する。右足ダイレクトで放ったシュートがGKに弾かれると、自らそのボールに反応し、ヘディングシュートでゴールネットを揺らした。前節でアーセナルを完封したウエストハムのDF陣を翻弄した先制点だった。2点目も、岡崎が前線でボールをキープしたことが起点になっている。
後半になると相手の猛攻を凌ぐ時間が続き、1点を返されながらも1-2で勝利を収めた。しかし、レスターのボールポゼッションはわずか30%。これが現実なのだ。今後対戦する強豪チームの数は多い。
劣勢のなか、少ないチャンスを得点につなげる。マインツ時代に話していた「ボールタッチ数なんて少なくてもいい」というタフさがレスターでも生きている。2トップという布陣だが、コンビを組むバーディーとの連携のなかでポジションを変えながら、中盤で組み立てたり、クサビを受けたり、裏へ抜け出したり、あらゆる状況に瞬時に反応し続ける。そんな姿に、改めて岡崎の対応力の進化を痛感させられた。
それは、ピッチ内外で重ねた経験、追求し続けた思考。彼のキャリアの賜物なのだろう。
しかし岡崎は、過去を捨ててきたと入団会見で語っている。
「何かにこだわるのではなく、いろんなものを捨ててここに来た。だからもう一度いろんなものを取り入れたい。マインツで1トップという居場所を見つけたように、このチームで自分が輝ける場所を見つけたい。自分はゴールをとりにプレミアリーグに来ている。このチームで新しい感覚を身につけて、このリーグで点を取れるコツというのを見つけたい。そして、日本代表でも決定力不足、得点力不足と言われるのを自分が解消したい」
周囲の期待よりも、岡崎慎司自身こそが欲深い。
29歳の新人は、図太い。
「ゴールを決めても、その余韻に浸るよりもすぐに次のことを考えてしまう。次も決めないと、意味がないから」
かつて岡崎はそう話していた。活躍すればするほど注目が集まり、期待が高まるなかで、新たな結果を残すことは難しくなるかもしれない。周囲の目は「もっともっと」とさらに望み、欲深くなるもの。
でもきっと、誰よりも欲深いのは岡崎慎司、彼自身なのかもしれない。
だから、過去を捨てることも厭わない。輝いていたかつての自分にはそれほど興味が無いのだ。
「まだまだやれるはず」と限界を嫌い、成長のきっかけに飢えている。それを探しにイングランドへやってきた。
29歳の新人は、強欲だ。