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ホンダに失望するのはまだ早すぎる!
マンセル、ピケが語る成功への時間。
posted2015/08/15 10:50
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
「現代のF1は、マクラーレン・ホンダが栄光を勝ち取ったかつてのF1よりはるかに進化しており、強力なマシンを作り上げることは一層、難しくなっています。
われわれも簡単ではないと予測して参戦しましたが、これほどまでに困難が伴うとは考えていませんでした」
これは、今年F1に復帰したホンダの新井康久F1プロジェクト総責任者が、シーズン前半を終えた後に出した声明の一部である。
'88年から5年間にわたってパートナーを組んだホンダとマクラーレン。
初年度の'88年には16戦15勝を達成。勝率9割3分7厘は、いまだに破られていないF1の金字塔である。
それだけではない。タッグを組んだ5年間で、彼らはドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権をそれぞれ4回ずつ制覇。まさにF1界を席巻し続けた。
そのような輝かしい歴史があったため、今年復活したマクラーレン・ホンダの前半戦を終えたここまでのパフォーマンスに失望しているファンは少なくない。
マンセル「かつてのホンダも最初は失敗の連続だった」
だが、かつてホンダとともに勝利を手にしてきた元チャンピオンたちは「ホンダの実力は、こんなものではない」と異口同音に語る。
'85年から3年間、ホンダとともにウイリアムズでF1を戦ったナイジェル・マンセルは、こう言う。
「F1で成功を収めるのは、みんなが考えているほど簡単なことじゃない。そこには数知れない苦労と困難が伴う。それを忘れてはならない。
'80年代から'90年代にかけて最強エンジンを作り出したホンダも、最初は失敗の連続だった。私は彼らがF1に復帰した2シーズン後の'85年から一緒に仕事を始めたが、その年ですら、前半戦ではまだ迷走状態にあった。
たしかモナコGPだったと思うが、週末だけで5基のエンジンがブローしたんだから」
この惨状に、ホンダは抜本的なエンジンの変更を決断。次戦カナダGPに新しいコンセプトで設計し直されたブランニューエンジンを1基だけ投入する。
するとマンセルのチームメートだったケケ・ロズベルグがそれまでのシーズン最高位となる4位に入賞。続く、デトロイトGPでは優勝を果たした。